人外の姿になった英雄王子は私の好みドンピシャストライクです!!【結婚編】

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先行配信日:2023/01/13
配信日:2023/01/27
定価:¥880(税込)
「こんな怪物、一体誰が愛するというのだ……」
国を救った英雄でありながら魔獣の血を浴びて怪物と化した第一王子。
そんな人外王子エグザリウスに嫁ぐ私、ヘラの想いは……大 歓 迎!
なぜなら前世の私は人外好きだったから!! 異種間恋愛って最高でしょ!
たとえ、好きになってもらえなくても、私は人外王子を愛します!!!
話題の人外溺愛新婚カップルWEB小説、大幅加筆の完全版。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

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【プロローグ】


「ヘラ。お前にはエグザリウス・ブラックウォーター第一王子の妻になってもらう」
 普段顔を合わせない多忙な父に呼ばれ、初めて入った父の書斎でヘラは開口一番そう告げられた。
 それと同時にヘラは思い出した。己の前世を。
 今世でヘラ・デュオンは悪名高い冷徹宰相の娘として生まれたが、前世では“日本”という極東の島国で生まれ育ち、大学の卒業旅行で飛行機事故に遭いそのまま帰らぬ人となった。
 まさかこのタイミングで思い出してしまったことに驚きながら、ヘラは俯きゆっくり頭を整理していく。

 この世界は日本でも外国でもなくまったく別の世界。いわゆる異世界転生というやつだろう。ここはブラックウォーター家が治めるアンドルジア王国で、私は宰相をしている父の娘。両親は健在で、兄が一人と姉が一人いる。
 父であるマーカスはとても優秀だけれど多くの者から恨みを買っている冷徹宰相。恨みは呪いとなって父に襲いかかる、はずなのだが――

「知っているだろうが、第一王子はお前同様に呪いを受けたお方だが廃嫡にはされず、今も変わらず第一王子としての権力をお持ちだ。お前が嫁げばデュオン家はさらに力をつけるだろう」

 悲しいことに、呪いは父本人ではなく子供である私や兄姉に降りかかっているのである。
 床にまで届く長い長い漆黒の髪に黒真珠を思わせる瞳。顔色は青白く、唇に健康的な赤みはない。身長は一八〇センチの大柄で、胸や尻には豊満な肉がついている。健康な肉体に反して顔は不健康に見える歪さを持ち、おまけに無口で根暗でコミュ障で猫背で陰鬱なオーラを纏う女なんて、呪いを受けていなくても嫌厭される。何度見知らぬ子供に魔女だと泣かれたことか……。ちなみに金髪銀髪の両親と容姿が似ていないのは呪いの影響で、同じく兄も姉も両親とはかけ離れた容姿で生まれた。
 当然結婚適齢期になっても相手は見つからず「このまま独身かしら」と思っていた矢先に父からの打診だ。

 エグザリウス・ブラックウォーターは王国の第一王子。誰もが羨むお立場の王子がなぜ、呪いを受けている見た目が魔女の私との婚姻の話が出てきたのかというと、エグザリウス様もまた呪いを受けた者だからだ。
 エグザリウス様の名誉のために言うけれど、私のような父の恨みからかけられた呪いではなく、名誉の負傷とでも言うのだろうか。
 今から十七年前、王国が魔獣王に襲われ、防衛も虚しく城にも攻め入られたが、当時十歳だったエグザリウス様は封印されていた聖剣を引き抜き、軍神の如く魔獣王を見事に討伐された。
 しかし相手は魔獣王、聖剣で己の心臓を貫くエグザリウス様に呪いを込めた血を浴びせたのだ。魔獣王が倒れ、周囲が喜ぶ中エグザリウス様は呻き、倒れた体はみるみるうちに醜い怪物の姿へと変容していった。
 エグザリウス様は国の英雄となったが、諸外国では怪物王子と陰で言われている。
 第一王子の武勇伝は国中に広まり、子供たちにとって憧れのヒーローなのだけれど、エグザリウス様は怪異の姿を決して民には見せない。国王様は息子を称え廃嫡にはしなかったが、王位継承権第一位は弟の第二王子に譲られた。
 エグザリウス様は二十七歳になられたけれど今まで婚約のお話も聞いたことがない。いくら国の英雄でも怪異の王子に娘を差し出す王侯貴族がいないからだ。
 ではなぜ今になってヘラと第一王子の婚姻の話が出てきたのか。それは端的に、権力抗争のためだった。
 デュオン家は王家に仕えているが、国には教会があり、王家派と教会派は長年静かに対立していた。しかしこの度めでたく第二王子が立太子され、これを機に長年いざこざが絶えなかった王家派と教会派が和平を結ぶことになったのがつい最近。第二王子が教会で権力を持つ枢機卿の娘と結婚することになったのだ。めでたいことだと喜んでいたが、枢機卿と長年犬猿の仲である父は、教会が今よりも力をつけることに納得していなかった。
 そこで思い出したのが、エグザリウス様と同じく呪いを受けた娘たちだった。まさにお誂え向きだと思っただろう。
 姉は辺境伯との婚姻が決まっていたが、妹のヘラは未婚。二十二歳で第一王子とも年齢は近い。
 枢機卿にだけは負けたくない父は国王様にエグザリウス様と私の婚礼話を持ちかけた。すると国王様と王妃様は、それはそれは心から喜んでくださったみたい。苦労している息子を愛してくれる人が現れることをずっと待っていたのだ。泣いて喜ぶ陛下たちをよそに、枢機卿に対抗意識を燃やしている父は内心でほくそ笑んでいただろう。父はそういう人だ。
 こうして父の権力抗争に巻き込まれた私はエグザリウス様と結婚することに決まった。
 何度か王宮へ行ったことがあるけれどエグザリウス様をお見かけしたことは一度もない。
 父にエグザリウス様がどんなお人なのか聞いてみたが「大きなお方だ」という雑な返答しか得られなかった。父は人種や生い立ちや見た目で人を判断しない。そこがいいところなのだけれど、もう少し相手に興味を持ってほしい!! 仮にも相手は第一王子で、娘の結婚相手なのに!!
 不敬にならない程度に探りを入れてみたが「怪物のよう」「魔獣王の生まれ変わり」「恐怖の具現化」など、まったくエグザリウス様の容姿がわからない。でもスライムや触手ではないことはなんとか父から聞き出した。

 王侯貴族が娘を差し出すことを拒否するくらい醜く恐ろしい怪物になられたエグザリウス第一王子との婚姻が決まってもヘラが冷静でいられる理由。それは――

 前世の私がとてつもなく異種間恋愛にハマっていたから!!!!!

 異種族と人間の女性のお話が大好きで、異種間恋愛モノの漫画やアニメをたくさん見ていた。
 恋愛なんていう甘酸っぱいものから少しグロテスクな異種姦モノも手を出していたくらい大好きだった。
 ケモナー、ドラゴン姦、産卵等など。前世を思い出した私にとって、普通の人間同士の恋愛よりそちらの方が興味津々である。
 そんな私の結婚相手が呪いを受けて怪異の姿になってしまった第一王子!! まだ姿を見ていないのに恋してしまいそう!!
 だけど、エグザリウス様は私のような女を好きになってくれるだろうか?
 いえいえ、弱気になってはいけない!! エグザリウス様が私を好きになってくれなくても、私が全力でエグザリウス様を愛せばいいのだから!!
 ヘラの青白い頬はかすかに色づき、黒真珠の瞳はやる気に満ちている。
 背筋を伸ばし、グッと手を握りしめたヘラは窓から王宮を見つめた。

 どうかエグザリウス様とハッピーラブラブ生活が送れますように!!!


【結婚式】


 この日、王国では二組の結婚式が執り行われた。
 一組目はこの王国の皇太子であるアルテミウス・ブラックウォーターと、枢機卿の娘であるフローラ・レッドロード。国中の女性を虜にする麗しの皇太子と、その美しさから女神の生まれ変わりだと噂されるフローラの婚礼パレードはとても華やかで盛大なものとなり、民は色とりどりの花を二人に降らせお祝いしていった。
 教会に到着する頃には民の興奮も最高潮となり、歓声が止まない中、皇太子と花嫁は民に向けて優雅に手を振っていく。
 二人はとてもお似合いで、まるで物語の主人公のような神々しさがある。民は感嘆のため息を漏らし、二人が教会の中へ入るまでその姿に見惚れていた。

 皇太子と花嫁が祭壇に着くと、先に教会に控えていたもう一組の新郎と新婦がその後に続く。
 来賓はその者たちを見て目を見開き口を閉ざした。
 身長が二メートル以上はあるだろう大きな体躯にも圧倒されるが、何よりもその怪異な姿に教会内の空気が張り詰めていく。
 肌の色は人ではありえない紫苑色。顔周りや服から覗く部分から、肌は蛇のような鱗に覆われていることがわかる。爪は黒曜石のように黒く、髪は腰に達するほどの長い白髪で毛先にいくにつれて黒のグラデーションとなり、頭には髪色と同じ白いトナカイのような角が生えている。眼球の色は染めたような黒で瞳は輝く黄金色。
 王族にのみ着用を許されている特別な正装に身を包み、胸にはいくつもの勲章が飾られ、腰にはその者だけが所有を許されている聖剣が下げられている。
 皇太子の兄で第一王子であり、この国の英雄、エグザリウス・ブラックウォーターその人である。
 そしてエグザリウスの腕に手を添えて歩く花嫁はまるで闇の使者を思わせる姿だった。
 純白のドレスを着ていたフローラに対して、この花嫁のドレスは黒一色であることに参列していた女性陣は目を剥いた。そして床を引きずるほどの長い漆黒の髪は黒い川のよう。癖もなくまるでシルクのような美しい黒髪はドレスと共にヴァージンロードを滑っていく。
 化粧をしているためまだマシではあるが、不健康な青白い肌は隠せない。薔薇色の唇とコーラルピンクの頬をしていたフローラとは対照的で、具合でも悪いのかと思えるほどだ。
 エグザリウスの隣ではわかりづらいが、身長は一八〇センチほどあり女性にしては長身。顔色のせいで脆弱で栄養が足りていないように見えても、胸も尻も豊満であることが布をたっぷり使われているドレス越しでもよくわかる。
 黒真珠のような瞳はまっすぐと前を見つめ、エグザリウスと歩調を合わせゆっくりと歩を進めていく。
 この国の宰相の娘であるヘラ・デュオン。この結婚式のもう一人の花嫁だ。

 本来であれば別々の挙式となるはずだったが、皇太子の意向で二組同日の挙式となった。
 これに対して第一王子は異を唱えたが、国王や王妃も賛成されたため二組同時の結婚式が執り行われ、皇太子と第一王子とそれぞれの花嫁は肩を並べて祭壇に並ぶことになったのだ。
 結婚式は恙なく進行し、皇太子と英雄の結婚を国中が祝福した。

 結婚式の後の晩餐会も無事に終え、ヘラは侍女たちにピカピカに磨かれて自室で一人、その時を待っていた。
「エグザリウス様、本当に素敵だったなぁ……」

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先行配信先 (2023/01/13〜)
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