第一話 出会って五分で溺愛子作りされてます
「一花……、一花……!」
「……だ、ダメ。……リツ、くん……」
私の腰を掴み、ガツガツと腰を振りたくってくるリツ。私は混乱と止まない快感でいっぱいいっぱいだった。
赤毛に気だるげで整った目鼻立ち、黒い長袖の服を着たやや中性的な美しい青年はまさしく、好みを詰め込んで描いた私の創作上のキャラクター、リツそのものだった。
しかし、襟ぐりの広い服をだらしなく肩まで晒し、汗を流して悩ましげに眉をひそめ蕩けた目で艶めかしく腰を動かす姿は、欲情した美しい獣に成り果てている。
(なんでリツくんが……? ……しかも、こんな事……)
コトの発端は、五時間前に遡る――
「はぁ、今日もリツくんかっこいいなぁ……」
自室にて私はいつものごとくスマホの待ち受けを見ていた。
待ち受けにしているのはもちろんリツくん。彼は、私の萌えを詰め込んで描いた私の創作キャラクターである。
「リツくんみたいな人、近くに居ないかなぁ……」
愛想笑いで人と深く関わり合いのないままぼっちの学生時代を過ごし、気が付けば成人。大学を出てからは家に引きこもってイラストレーターの仕事をしている。
猫背気味だったせいか胸だけは大きいが、外に出ないので肌も青白くて体力も無く、その上顔も自他ともに認める平凡なため、ごくまれに外出しても異性に声を掛けられることも無かった。
〝恋人いない歴=年齢〟
悲しいかなこれまで恋愛のレの字もない。
枯れた人生が無性に寂しくなった私が二年前、気まぐれに創作したのがリツだった。
目に掛かるくらいの少しくせっ毛な赤毛、赤金の猫っぽい瞳に、やや中性的な顔立ち。しかし身体付きはそこそこ筋肉が付いていて、服装は襟口が広く萌え袖気味な黒い長袖。弟と二人暮らしで、カフェでバイトしている面倒見の良い……
好みを詰め込んだら思いの外上手く描けてしまったうちの子に名前と設定を付けてしまえば、もう親バカになるしかない。
「……まぁ、現実に居たところでモテモテだろうし、私なんかリツくんの話し相手にもなれないんだろうなぁ……」
ピロン――明るい音と共に画面に通知が来た。
〝リツさんにフォローされました〟
「り、リツく……さん!?」
仕事でも愛用している呟きアプリの通知を見て一瞬思考が停止する。
珍しい名前でもないし絶対に別人だと解っているけれど、推しの子を考えている時に同じ名前の人を見掛けるとドキドキしてしまう。
(なんてタイムリーな……っ)
転生して推しと結ばれる女性向け小説なら数え切れないほど読んできたが、現実にそんな夢のような話があってたまるか。
しばらく冷静に考えたのち、改めてフォローしてくれてありがとうの気持ちで通知をタップした、はずだった。
「……え?」
タップしたはずの指が画面に沈む。思考する間もないまま謎の浮遊感と共に、視界が渦巻いて真っ黒になった。
***
「……み、……君!」
「っ!?」
ばっと目を開くと、私は乗り上げるように誰かを押し倒していた。
「君……大丈夫?」
「へ……」
目の前では困惑した様子の赤毛のイケメンが……いや、どこかでよく見たようなイケメンが私に押し倒されていた。
「リツ……くん……?」
「……え?」
真っ赤で癖のある髪、ハッキリとしたややつり目な赤金の瞳、ゆるめの萌え袖な黒い服。リツくん似な上にどういう訳か二次元3Dに見える男性に思わず声をかけるが、男性を押し倒していた事をようやく頭が理解してあわてて飛び降り距離をとった。
「……っご、ごめんなさい!!」
「や、別に……」
(何言ってるの私!! リツくんは私の創作なんだから実在する訳ないでしょ!! ……って言うか……)
スマホを持たない自分の手はリツくんと同じく3Dめいており、ツルツルしていて若干の違和感を覚える。白昼夢というやつなのだろうか、……それにしては意識がはっきりとし過ぎている。
「ここ、どこ……?」
「ここは俺の家だよ」
さっきの困惑した顔とは打って変わって、リツくん似のイケメンは柔らかな笑みを浮かべた。
「うそ、なんで……? さっきは確か私の家で……!?」
「ふ、かーわい」
「はぁ!?」
急に後ろから抱き着いてきたイケメン。それどころかイケメンは、私の頬にキスを何度もし、頬ずりをしてきた。
生まれてこの方男と付き合ったことが無い私は、予想外の展開に上手く言葉が発せず、萎縮してしまう。
「ちょ、……な、あの……」
「フォローした途端急にスマホから出てくるんだもん、本当にチカが出てきたのかと思ったら……本物だったんだ……」
〝チカ〟は、つぶやきアプリでの私のニックネームだった。
(ど、どうして、私の名前を……はっ)
フォローした途端、スマホから出てきた……?
確かに今さっき、リツという人にフォローされた。しかも、スマホの中に吸い込まれて……目の前に、ドッキリ企画なのかと思うほどリツくんにそっくりなイケメン、が……
考えれば考えるほどに、夢のような話が現実味を帯びていく。
「……え、じゃあ……ほんとにリツくん……?」
「そうだよ。……ああ、この声……。夢にまで見たチカだ……っ」
ぎゅうぅと抱きしめられてますます混乱してしまう。
(そんなファンタジーな事あるの!?)
「ねえ、チカって本当の名前はなんて言うの?」
「え!? あ……一花、です。一つと、花……で……」
「イチカ、へぇ、本名の一部なんだ。俺は……って、一花は俺の事なら何でも知ってるよね」
「じゃあ、本当に……?」
思わずリツの頬に手を伸ばして触れると、リツは嬉しそうに一花の手に自分の手を重ねた。
よくよく見ても二次元3Dにしか見えないが、シミ一つない滑らかな肌は温かく、動きも感触も人間そのものだった。
設定上、リツはカフェバイトしつつ弟のナツと二人暮らししている、面倒見のいいお兄ちゃんだったはずだ。設定どおりならば、弟のナツも居るはず。
「ナツくんも居るの?」
兄のリツと違い薄茶天パなのんびり高校男子の弟キャラを思い出し、周りを見渡す。すると、一花の手を撫でていたリツの手が止まった。
「……ナツはもう、寝てるけど。……なに、ナツにも会いたいの?」
「居るんだ! うん、会いたい!! ……あ、でも寝てるなら起きてからでも良いよ」
(すごい! 本当に転移したんだ私!)
夢のような展開も、一通り驚ききれば不思議と嬉しさが勝るようで、自分が創作したキャラクターの世界に自分も居るのだと思うと、思わずによによしてしまう。嬉しそうな一花を見てリツはスッと目を細めた。
(まてよ……? 私、詳しい世界観とかは設定して無かったけど、仮にここが転生世界だとして、戸籍とかはどうなるの……? 戸籍が無いと仕事も出来ないし、ここには頼れる身内も居ないよね……)
喜びから一転、何一つ身寄りの無い現状に頭を抱えた。
(現実逃避なんてしてる暇無い、何とかして帰らなきゃ……)
スマホから出てきたのなら、もう一度スマホを確認すればいいのでは? そう考えるが、一花の手にスマホは無かった。
それならば、リツのスマホを借りてみるしかない。
「リツくん、ちょっとスマホ貸し……」
「なんで、俺が一花の推しなんじゃないの……?」
「……へ?」
小さくてよく聞こえなかった。
呟いたリツに手を引かれ、私はベッドに押し倒された。
***
――そうして、今に至る。
「なに、考え事してるの」
「あぅっ♡」
繋がったまま一花の身体を抱き起こしたリツに下から突き上げられ、回想から引き戻された。
一花の反応が薄くなっていたのか、不服そうに言ったリツに慌てて言葉を紡ぐ。
「ふ、……あっ……リツくん、の、事……っ」
「……っ!」
「んむっ」
考えてた、とまでは言わせて貰えなかった。ほんのり顔を赤らめたリツが一花の口を塞いだから。
「んっ♡ んぅ……ふ、……っ♡」
「はっ、……可愛い……ん、……ちゅぅっ、一花……ん♡」
器用に喋りながら舌を絡めてくるリツに翻弄される。
逃がさないというように、見た目より太く筋肉のついた腕が背中と腰に力強く巻き付き、ナマで挿入されているソレでぐちゅぐちゅと子宮を突き上げられた。
「どう? っ、俺の、気持ちいい? ほら、推しのちんぽ、だよ? んっ、……沢山、突かれて、……嬉しいね?」
「ふっ、お、推し、だけど……っぉ……あっ♡ 駄目、そこ駄目ぇ♡」
「……ははっ、相性抜群だ、んっ……♡ 俺は一花の好みで作られたんだから、当たり前だけど……っ、はぁ……♡」
確かに、リツは一花の好みを詰め込んだ創作男子だったが、見た目以外は軽く設定を作っただけだったはずだ。
(こんなエッチな設定考えてないよ!?)
何しろ、ちょっとした癒しが欲しくて考えたキャラなのだ。勿論自分とどうこうなるとかも考えてなかったし、そもそも次元が違う、我が子どうぜんの創作男子にこんな事させたいなんて思わない。
そもそも、一体どこに、作者に愛を乞うキャラがいるのだろうか……
(こんな事してる場合じゃないのに……、家に帰る方法探さなきゃ、なのに……)
二十五センチはあろう巨大な赤黒いそれは、先走りを執拗に子宮口に塗り付けながら、雌を孕ませたい一心で最奥に開ききった尿道口で愛情たっぷりのディープキスを繰り返す。
上の口も下の口も犯され、次第に頭がふわふわしてきた。
「んぅ、……っ♡」
「んっ……く、は……っ、ん~~っ♡ ……で、出そ……♡♡」
「ふっ……!? だめ、中は、止め……っ♡」
先端一センチほど僅かに入り込んでいた子宮口から、ちゅぽっ♡ と先端を引き抜くと、物凄い勢いで抜き差しを始めた。
軽く仰け反り、恍惚とした表情でメスへの種付け交尾する事だけを考え腰を振り乱すリツ。大量に漏れだした粘液が子宮の中でいくつも糸を引き、赤黒く腫れ上がった亀頭が震えながら精巣から精子を引き出していく。
(嘘でしょ、このまま中に出されたら……!)
「リツくん! お願い、出さないで! あ、赤ちゃん、出来ちゃううっ」