背中からキス 新婚編 ~異世界旦那さまとの甘いひととき~

著者:

表紙:

先行配信日:2024/05/24
配信日:2024/06/07
定価:¥880(税込)
「誰にも渡さない。心から愛してるよ」

異世界に召喚された女子大生の桜は、宮廷医術師シャルと恋に落ちた。
シャルと共に生きることを選んだ桜は――相変わらず傍若無人な彼に振り回される生活を過ごしていた。
夫婦になっても慌ただしい二人の日々。
昼夜だけでなく場所も問わず本能のまま触れてくるシャルに抗うこともできず――

「嫌がりつつも感じているところを組み敷いて、とろとろになったココをかわいがってあげるのが好きなんだ」

恋に友情に大忙しな桜とシャルのその後のおはなし。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

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第二部









プロローグ



 アルコールを含んだ体が、熱に濡れる。
 何度目かわからない絶頂に引き上げられ、わたしは全身で快楽を享受した。
「あ……シャル、さん、もう……っ」
「うん、そうだね」
 深く自身を埋め込んだまま、シャルさんは淡く微笑する。奥のほうを揺すられて、体がぞくぞくと震えた。
「熱くてやわらかくて、ひっきりなしに締めつけてくる。おいで、桜。もっと気持ちよくしてあげるよ」
「やだぁ……っ」
 もうだめ、ムリ。
 シャルさんはわたしの背中に腕を回して、あぐらをかいた自分の上に座らせた。ぎゅっと抱き締められて、硬いものが一番奥の、いま一番当たっちゃいけない場所にぐりぐりと押しつけられる。凶悪な快感が打ち寄せて、わたしは必死でシャルさんにすがりついた。
「あぁぁん……!」
「は――、今日は抱くつもりは、なかったのにな」
 耳もとでささやかれる、やわらかな低音。
「お酒を飲んで、肌をピンク色に染めた自分が、どんなに可愛いか知ってる?」
「知らない、そんなの……っ」
 シャルさんは奥をかき回すようにしてしばらく愉しんだあと、ふたたびわたしをベッドに押し倒した。男らしい指先で、わたしの震える唇をなぞる。
「そんなに飲んじゃだめだよって止めたのに、言うこと聞かないからいけないんだよ」
「だ……って、シャルさんのほうがいっぱい飲んでたじゃないですか……っ」
 ゆっくりと抽挿が続けられている。
 甘い快楽に冒されていく。
 青色の瞳を優しく細めて、シャルさんはわたしの髪を梳いた。
 ――今夜はなんとなく飲みたい気分だったのだ。朝からひどい雨でどこにも行けなかったから、家のなかにこもってこの世界の字の練習をひたすらしていた。そのせいでストレスが溜まっていたからかもしれない。
「そろそろ……オレも、限界かな」
 最奥に強く打ちこんで、シャルさんがわずかに乱れた息を吐く。
「早くてごめん。桜があんまり可愛いから自制がきかない」
「全然……早く、ありませんっ」
「オレも酒にはそんなに強くないんだよ」
 嘘をつけ、このウワバミ!
「だめ、シャルさん、もっと、ゆっくり……っああ!」
「っ、桜、もっと締めつけて。そう、上手だね」
 愛してるよ、とかすれた声でささやいて、シャルさんはわたしの唇を塞ぐ。
 絶頂はすぐそこにきていた。



『もっと締めつけて』とか、言わないでほしい。
 朝、日差しを頬に浴びながら、わたしはぼーっとベッドに横たわっていた。
 シャルさんが『ゆっくり寝てていいよ』とキスを落としながら仕事に出かけたのは、二時間ほど前だ。昨夜わたしをあれだけ翻弄したのだから、それくらいの甘やかしはあって当然だろう。
 それにしても、翻弄されすぎだし、されっぱなしだ。
 一度でもいいから、なんとか主導権取れないかな。
 あんまり働かない頭が、無謀なことを考え始める。
 いつもシャルさんに優位に立たれて、悔しい。たまにはわたしがシャルさんをもてあそんでみたい。シャルさんを翻弄してみたいという願望が、ふつふつと湧き上がってくる。
 シャルさんを、もてあそぶ。
 そのフレーズをわたしは大いに気に入った。そんなことができたら、すっごく楽しそう。
 思い立ったが吉日だ。わたしは勢いよく起き上がり、高速でいつものコットンワンピース型のデイドレスに着替え、家を飛び出した。
「アリオスさん教えてください! どうしたらシャルさんをベロベロに酔わせることができますか?」
 ベルサイユ宮殿ならぬアリオス邸に乗り込んで、わたしはさっそく質問をぶつけてみた。
 彼のお仕事がお休みだという情報は、事前にシンシアから入手済みだ。
 アリオスさんは食堂で優雅な朝食の真っ最中だった。隣で配膳をしていたシンシアが、あきれた目を向けてくる。けど知ったことじゃない。
 クロワッサンをお皿に置きながら、アリオスさんは微笑する。
「それは難題だが、できないことではないよ」
「本当ですか! どうやるのか教えてください」
「よからぬことを企んでいるようだね」
「シャルさんをもてあそびたいんです」
「ほう。それは楽しそうだ」
 アリオスさんは余裕の表情だ。わたしは身を乗り出した。
「ベロベロに酔わせればもてあそべるかなって思って。どう思いますか、アリオスさん」
「じつに桜らしい発想で、興味深いね。そうだな、ウォッカをビールで割ってみたらどうだい? 空腹のときをねらって、短時間で多くの量を飲ませるのがポイントだよ。シャルはすぐに醒めてしまうからね」
 なるほど、ちゃんぽんか。
 日本語でメモっていると、シンシアがため息をついた。
「どうせ最後にはやり込められるんだから、無駄なあがきはしないほうがいいんじゃない? シャルさまにお仕置きされる姿が目に浮かぶようだわ」
「だから、そうならないコツを教えてほしいんだけど」
 アリオスさんに聞こえないように、わたしはシンシアを部屋の隅に引っぱった。
「もてあそぶって、具体的になにをすればいいの?」
「あんた、ほんっとバカね」
 心底あきれた目をされる。ま、負けるものか。
 シンシアは肩をすくめた。
「シャルさまのアレを咥えてみたら? 意外とおもしろい反応がかえってくるかもしれないわよ」
 三秒後にその意味を理解して、わたしはもてあそぶという行為の深淵を見た。それと同時にちょっぴり怖気づいてしまったのも事実だ。
 わたしは本当にシャルさんをもてあそべるのだろうか? そんな疑問が頭をよぎった。



 そのチャンスは二日後にやってきた。
 シャルさんの休日の前日なので、遠慮なく酔いつぶすことができる。
「シャルさん、お酒飲みませんか?」
 彼はガウンを着て、居間のソファで本を読んでいる。文字に目を落としたまま、「そうだね」と答えた。
 わたしはさっそくウォッカを入れたジョッキにビールを注いでかき混ぜ、テーブルに置いた。
「シャルさん、かんぱーい」
「うん」
 本にしおりを挟んで肘かけに置き、互いのグラスを鳴らす。わたしの飲み物はただのオレンジジュースだ。グラスに口をつけながら、それとなくシャルさんの様子をうかがう。
「……? これ、なに?」
 眉を寄せて、シャルさんが口からグラスを離した。まずい、バレそう。
「ええと、アリオスさんからいただいたウォッカです。おすすめの逸品だそうですよ。美味しいですか?」
 青い目が、ちらりとわたしを見る。
「うん、まあ。美味しいけど」
「よかった! いっぱい飲んでくださいね。たくさんもらったんです」
「桜は飲まないの?」
「わたしウォッカは苦手だから! 果実酒にしました」
 そう、とシャルさんはつぶやく。そのままいっきに飲み干してしまった。
「次も同じのでいいよ」
「えっ、あ、はい」
 待って待って、こんなにいっきに飲んでいいの? いくらシャルさんが強いと言っても限度があるよね。
 動揺しつつも、同じものを作って出した。彼は次々に飲み干していき、十杯目をカラにしてようやく、気だるげにため息をつく。
「少し酔ったな」
 ついに来た、このときが。
 わくわくを抑えつつ、わたしはシャルさんを覗き込む。
「酔っちゃいましたか?」
「うん。今日はもう寝ようかな」
 シャルさんが熱っぽいため息をつく。
 この人は酔いつぶれてもカッコいいな。わたしは誘われるように紺青色の髪に手を伸ばした。シャルさんの髪はいつ触ってもサラサラで心地いい。
「ねえ、シャルさん」
「ん?」
 いつもより水分多めの青い目が、もの憂げに見上げてくる。その色香にどきりとした。心臓の鼓動が速くなる。
(だめだめ、わたしが動揺してどうするの)
 ここは気を強く持って、自分に打ち勝たなければならない。
 いまこそ度胸を見せるときだよね。そのためにやるべきことと言えば――、シンシアのろくでもない発言が脳裏によみがえってきた。
 本当にするの? そんな恥ずかしいこと、わたしにできるの?
 でもシャルさんを手のひらで転がす優越感を、人生に一度は感じてみたい。そのためなら多少の恥ずかしさは我慢できるはず。
 そう、この欲求を満たすためには、やるしかないのである。
「……!? 桜!?」
 びくりとシャルさんが全身を強張らせた。
 わたしが絨毯に両膝をつき、彼のガウンを開いて下着をいっきに引き下ろして、まだ大きくなっていないけれども充分に大きいソレをぱくんと咥えたからだ。
「待っ――、いきなりなにを」
 予想以上の反応だ。さすがシンシア。わたしはシャルさんを上目遣いで観察した。
「っ……、」
 シャルさんの頬はほんのり赤くなり、息が上がり始めている。
 こういうことをするのは初めてだけど、シャルさんは感じてくれているみたい。わたしは気をよくして尋ねる。
「気持ちいい? シャルさん」

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