1.異世界で旦那様と充実した夜を過ごしたいんです!
「ううむ……」
ユーリこと、相田悠莉は悩んでた。
古井戸に落ちたと思ったら、いわゆる異世界といわれる不思議な世界に降り立ち、聖女様と呼ばれたり、国同士の陰謀に巻き込まれたり、隣の国の王子様にモーションかけられたり、なんやかんやで護衛についていた騎士様のエルシオンと波乱万丈の末、想いを伝え合い、ようやく先月結婚式を挙げ、まさに嬉し恥ずかし新婚真っ最中であるのに!
「違う……。思ってたのと違う……っ!」
ただ今、全力で欲求不満中なのです!
***
旦那様のエルシオンは、26歳、軽くウェーブのついた淡い金の髪に若葉のような翠の瞳の美青年だ。平均よりやや高い私より頭一つ分高い身長に、引き締まった身体、整いすぎた顔と鋭い眼光のせいで冷たく見えるが、私に向ける笑みはとても温かい(ともすれば、でろでろに溶けそうなくらい熱い)。
となれば期待しないわけにはいかないでしょう!
もちろん、アレですよ。夜の営みというやつです。夜じゃなくてもいいんですけどね。
相田悠莉23歳、(元)処女。
愛読書が女性向けエロ本……いや、ロマンス小説という、妄想とエッチの興味は男子中学生並みの少々イタイ女でした。こっちの世界に来た時、真っ先に心配したのが自宅にある蔵書という。だって、行方不明になったら必ず家族や警察は行方のわかりそうなものがないかと家捜しするでしょう?
そんなとき、『黒王子の愛淫レッスン』とか『囲われた花嫁~騎士の夜は淫らに~』とかのタイトルの本がわんさか出てきたら?
ヤバい。死ぬ。恥ずかしくて死ねる。
私はオープンなエロではなく、カマトトぶってるムッツリだからだ。周囲は私の裏の趣味を見て、ドン引きするだろう……と半狂乱になって、どうにか帰ろうと出てきたばかりの泉に一心不乱になって入り、身体が冷え切るまでどこにもない帰り口を探した。そういえば、その時後ろから抱き留め私を落ち着かせてくれたのがエルシオンだった。
「必ずお前の世界に帰してやる! 大丈夫だ。俺が守ってやる」と何度も繰り返し、落ち着くまでずっと抱いていてくれた。もう、帰れなくてもいいんですけどね。こっちに来てから一年以上経っちゃってるし。今更のこのこと、帰れませんよ。
エルシオンとも離れたくないし。
2.初夜では我慢が利かなく朝までコースじゃないんですか?
無事結婚式、パーティーが終わり、エルシオンの家に帰った時はもう真っ暗だった。
正直、疲れた……。朝からずっとだし、昨夜は緊張してあまり眠れなかったし。でもでも。まだ今日は休めない。なんたって
初夜!
なんですもの。日本だと交際期間中にアレコレしちゃったりするけど、こっちでは結婚するまでしないのが当たり前なのかな? いい雰囲気になってもエルシオンは手を出そうとしなかった。結構キスはオープンなのにねぇ。スキンシップ過多な国だと思うよ。王子様とか、人前でも平気でイチャイチャしまくってるし。
最初はびっくり、恥ずかし! で見ないふりしてたけど、最近ではガン見ですよ。まるで、ロマンス漫画のような画面が生で見れるんですから(ただし、美形に限る、だけどね)。
手を出してこないのはエルシオンの性格かもしれない。潔癖な騎士様だもんね。ストイックな見た目を裏切らず、付き合い始めてもキスもほとんどしてこないし。そこらへんは王子様カップルが羨ましくなる……けど、実際エルシオンがあんなことしたら恥ずかしくて死ぬ気がするなぁ。
妄想と現実は違うっていうけど、ほんとだよね。
キスの生々しい唇の感触とか、舌が触れたときの電気が走るような感覚とか。なによりも、間近で見るエルシオンの美麗な顔とか熱のこもった目とか、周りの空気をピンクに変えちゃうような、あの雰囲気がたまらなく恥ずかしくて、もっと沢山深いキスをしてとろっとろに溶かして欲しいって思ってるくせにエルシオンの服を握りしめ(背中に手をまわすなんて真似できません!)、かたい胸におでこをうずめてしまう。
23歳処女は奥手なのだ。脳内はエロエロ妄想がくりひろげられているけど。
というわけで、エルシオンと一緒にベッドに横並びで腰かけています。
どうしたもんか。会話もなく座っております。こーゆー時って、男のほうがなんか愛の言葉を囁いたり、それとも辛抱たまらん! って押し倒してきたりするんじゃないんですかね。この気まずい沈黙はなんでしょう? 疲れと緊張と妄想飽和状態のせいか、あまり現実味がない。チラッと隣を見ると厳しい顔をした旦那様。
どうしたもんか。
もしかして今夜はナシ? 何を考えて、あんな顔になっちゃってるんだろう。不安な気持ちがじわじわと心を浸食してきた時、肩をがしっと掴まれ噛みつくようなキスをされた。
ようやく始まった! とホッとしてると胸を揉まれた。いきなりのことで動揺してしまったら、動揺を感じたのかキスが優しいものに変わり、宥めるように、唇を柔らかく押し当て軽く吸われ、ちゅっと水音がすると、うっとりしてしまう。
そのまま、舌で唇をなぞるように舐められ、下唇を食まれ、甘噛みされる。
キスに夢中になっていたら、胸をやわやわと揉んでいた手が胸の頂に触れて、身体がびくっと震えてしまった。
キスはどんどん深いものになり、舌を絡め合い吸われてぐちゃぐちゃになる。胸も時々、頂にかすめるように触られて、息があがってくる。
「……っふ。ぁあ……ん……」
おおっ。やらしい声が出てる。
我ながら練習で出してみた声より格段にエロい。エルシオンがそのまま、首筋甘噛みしたり、舐めたりすると、くすぐったいような、むずむずするような、今まで感じたことのない感覚で身をよじってしまう。
なにより、エルシオンが感に堪えない様子で息を荒くすると、彼が私の身体に興奮してるって感じて、私も嬉しくって興奮した。そのまま、エルシオンの手が下にさがってゆき、内腿に這われ、嫌じゃないけど「あっ……ダメっ」て恥じらってみると、怖いくらい真剣な顔で「大丈夫だ」と言い、膝裏を持たれて足を開かされてしまった。
***
私は天井を見ていた。
……いつまでこうしていたらいいんだろ。冷静になっている自分を叱咤し、もっと感じろ! と命ずる。
「……んっ」
とか声を出してみるけど、手持ち無沙汰感がハンパない。自分の足元を見てみると、股の間にエルシオンがいて色々触ったり指を入れたり、真剣な顔で一生懸命いじってる。
……濡れないから大変なんだろうなぁ。
アソコがまだ入れる前からヒリヒリする。狭い(と予想される)膣口に入れられた指の感触は異物感しか感じない。視線を感じたのか、エルシオンが顔をあげたので目が合ってしまう。思わずバッと顔をそらす。
いや、だって冷静に見てられない。大股開きで自分ですらよく見てない、触ってないところを好きな人が真剣な顔していじりまくってるなんて!
わかってたけど、わかってなかった! これは心を無にしないとできません! そして無にしてるから、濡れないのかもしれません!
あ、羞恥心が高まってちょっと濡れた……。
エルシオンがむくっと身体を起こし、私の腰を掴むと一言「入れるぞ」と言って熱い昂りを押し付けてきた。とうとうなのね! と喜んだのもつかの間、血の気がひいていくのがわかった。
本の中のヒロインたちが、無理! 絶対入らない! と言っていたのが、よくわかりました。無理無理無理! 先っぽの感触だけでも無理だとわかります! これが自分の中に入ってあんあん言うなんて、ありえないと思います! 完全に引けてる腰をガッチリ掴まれ問答無用にぐぐいと突っ込まれる。
……杭っ。
熱杭とか書かれてるけど、ほんと杭。完全に打ち込まれてる。
「……ぐっ」
初挿入の声とも思えない色気のないうめき声だけど、痛みに耐える私には演技する余裕なんてない。奥歯を噛みしめて耐えていると、エルシオンがキスをしてくる。
か、角度が変わって、痛いんですけどぉ。むしろ、やめないなら一気に突き入れちゃってください。
じわじわ挿入るほうが辛いですぅぅぅ!
キスしても奥歯を噛みしめるのをやめない私に、優しく唇を合わせ、舐め、軽く食み、繰り返していると身体の力がすこし抜けていく。いっぱいいっぱいになっていた私は、ようやくエルシオンの顔をまともに見た。
そこには美しい獣がいた。
普段の涼しい顔ではなく、額に汗がにじみ少し長めの前髪は邪魔なのか後ろにかき上げ、眉根をよせ辛そうな顔をしている。若葉のような鮮やかな翠の目には明らかな熱がこもっていて、私を射竦める強い光を放ってる。その目に見つめられ、私は「食われる!」と瞬時に思った。
狙われ、拠り所がなく身をすくめ、それなのに甘く胸がうずく、心が震える。その瞬間、ズガンと杭を打たれた。
完全に油断していた私は「ったー!」と叫んでしまったが、エルシオンはふぅぅぅぅぅぅと細く長い息を吐くと今まで史上一番甘い甘い顔で幸せそうに笑った。
「全部入った。俺を受け入れてくれてありがとう」
下半身は杭打たれてますけど。結構存在感のある杭ですけど。それがこのキラキラした旦那様の杭とは思えませんけど。私は大股開きで下腹部の圧迫感に苦しみながら、エルシオンの笑顔にキュンキュンしてしまい、ついでに下腹部もキュンキュンしてしまったらしい。
「っく! ユーリ。すまん、ちょっと動くぞ」
またエロエロの捕食者の顔をし、ちょっとどころじゃなく腰を動かしはじめた。脳裏にハンマーで杭が打たれているところを浮かべながら、「ぐっ」とか「はうっ」とか色気皆無なうめき声を再開し、エルシオンの好きなように揺さぶられているうちにだんだん慣れてきたのか、痛みではないなにか。
快感と呼ぶにはまだちょっと弱い……と思っているうちに、「んっ」と声が濡れてきて「やぁっ」と正体不明のなにかが突き抜け、ぐちゅぐちゅという水音とふたりがぶつかる音が部屋に響き渡り、「あああん、あん、あん」とエルシオンの動きに合わせて抑えられない声をあげてしまい、「……っ、出、出る! 出していいか……っ!」とエルシオンの切羽詰まった声に、あんあん喘ぎながらコクコクとうなづいたのち、さらに激しくされ中に熱い飛沫をぶつけられた。
エッチすごい……。本物すごい……。抱きしめられ、顔中キスされ、頭なでられながらぐったりしていると、「大丈夫か?」と心配そうに覗いてくる若草色の目があった。疲れまくったし、アソコもヒリヒリするけど。
「大丈夫。……ちゃんと気持ちよくなれた……?」
「すごい気持ちよかった……」
ぎゅっと抱きしめられて、ホッとした。
これ、2回戦なんてできるかなぁ。朝までとかって、あと何時間くらいかなぁ。とつらつら考えていたら、エルシオンはさっさとベットから出て、(今、気が付いたけど、エルシオンは服を脱いでいなかった。ズボンをゆるめてアレだけ出してたらしい)「風呂入ってくる。そのまま寝てていいぞ」と寝室を出ていってしまった。
あれ?