お一人様で生きていきたいのに、前世の旦那様にロックオンされていて困ります2

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表紙:

先行配信日:2024/11/22
配信日:2024/12/06
定価:¥880(税込)
騎士団長付きの事務官ルビエラは、たびたび喧嘩をしつつも騎士団長であるダニエルとの交際を続けていた。

付き添いとして参加した出張では、通っていた学園時代の先輩との再会や舞踏会に参加させられたりとイベント盛りだくさん! ルビエラを大好きなダニエルが我慢するはずもなく仕事の合間に甘く愛され心も体も慌ただしい日々。
王都に戻ったら今度はダニエルと関係のあったナターシャに宣戦布告をされ……

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

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第1話 噂話



 ルビエラとダニエルが付き合い出してから二週間がたった頃、極秘任務の為に招集されたダニエルを指揮官としたイレギュラーな集団が夜の街に散開した。
 いずれも制服は未着用で、遊び人を装い娼館に消える。
「公費で娼館遊びとか、最高じゃねぇ?」
「シッ! 馬鹿なこと言うなよ。俺らは情報収集と媚薬中毒者の判別が任務だろ」
「でも、怪しまれない為にはヤルのがてっとり早いんだから、ラッキーな仕事だよな」
 今回の任務は、単身者で彼女がいない騎士が選ばれ、娼館に客として潜入して媚薬の常習者を探し出し、中毒者の隔離治療、媚薬の購入ルートの解明、さらには撲滅を目指していた。
 媚薬を売りさばいている組織は不当な人身売買にも関わっているらしく、いっきにそれも検挙したい騎士団は、組織にバレて地下に潜られたら困ると、とにかく秘密裏に行動していた。騎士団の中でもこの任務を知っているのは、関わっている騎士達と、上層部の数人だけ。
 もちろんただの事務官のルビエラは知る筈もなかった。
 ダニエルはスタンセン娼館の一室を借りて今回の任務の拠点にしている為、二~三日に一度はスタンセン娼館を訪れていた。
 スタンセンの新人に薬を卸していた商人が商品の仕入れにハンス地方へ戻ったという情報を得た為、諜報機関である第四騎士団に依頼して、その商人を尾行し監視してもらっている。王都内の警備を担う第三騎士団は王都以外では捜査の権限を持たないので、王都全土で諜報活動ができる第四騎士団と、地方を守備する辺境騎士団との連携が重要となった。
 全てを秘密裏に行わなければならず、総指揮をとっているダニエルは多忙を極めた。せっかく付き合えることになったルビエラとの甘いエロエロイチャイチャタイムが皆無で、ダニエルのストレスはマックス状態だった。ここ数日は顔すら見られていなかった。
「ダニー」
「あ゛っ!?」
 ダニエルのいる部屋の扉を開けたナターシャは、今までだったら有り得ないくらいの不機嫌顔のダニエルに出迎えられた。
「あら、ご機嫌斜め」
「ナターシャか。……悪い、ちょっと寝不足で」
「クスッ、ダニーの不機嫌顔なんかレアね。体力お化けのダニエルも、昼夜逆転の生活は辛いのね」
「まあ、昼間も普通の騎士団業務があるからな」
 ナターシャは部屋の中に入ると、書類が山になっているダニエルの机の上にムッチリとしたお尻をのせた。わざとらしく足を組み、ダニエルに太腿を見せつけるようにする。世の男性の目をくぎ付けにするナターシャの魅惑的な太腿も、ダニエルにはただの肉の塊でしかない。以前はその肉の塊に惹きつけられたこともあったのだが。
「あら、昼間も仕事してるの? じゃあほとんど寝てないのね」
「さすがに仮眠はしてるさ」
「ふーん。じゃあ、たまってるでしょう?」
 ナターシャがダニエルの胸に、ツツツッと指を滑らせる。
「たまってるよ。彼女不足がな」
 一瞬表情をなくしたナターシャだが、すぐにニッコリと顔を取り繕う。
「そう。ご馳走さま。でもさぁ、その彼女さん、ダニーが寝る間もなく働いてるのに、コンパで男にお持ち帰りされるとか、さすがダニーの彼女さんって感じ?」
「は?」
 ダニエルに触れた手を、さり気なく離されたナターシャは、こりずにダニエルの肩を指でなぞった。
「なんの話だよ」
「そのままでしょ?」
 ダニエルは邪魔なナターシャの足を避けて立ち上がると、壁によりかかりながら腕を組んだ。ナターシャを完全に拒否するその姿勢に、ナターシャの顔が傷付いたように歪んだが、すぐにいつもの気の強い娼館ナンバーワンの顔に戻る。
「ずいぶん前から噂よ。騎士団の赤毛の新人事務官が、コンパで男漁りして持ち帰られてるって。なんか、男の家に男二人と入って行ったとか、明け方その家から男と仲良さそうに出てきたとか。数人の男をわざとらしく愛称で呼んで、自分の物アピールしてるんですって。ダニーもその中の一人として噂されているわよ。騎士団一の色男が、色気皆無の新人にうまいように騙されてるって。あの見た目に私も騙されたわ。男なんか知らなそうなモッサイ格好して、さすが辺境出身、男を咥え込み慣れてるのね」
「そんな訳ないだろう」
 ルビエラが男を知らなかったのは事実だし、そのルビエラを開いたのはダニエル自身だ。いつもはツンツンしているルビエラが、目元を赤く染めて蕩けた表情を見せるのは自分だけの筈。
「あら、平民の女に貴族みたいな貞操観念がないのは、ダニーが一番よく知っているでしょ。そんな女達を沢山抱いてきたんだから。男だってそう。じゃなきゃ私の商売上がったりだもの」
 クスクス笑いながら机から下りたナターシャは、壁に寄りかかるダニエルの前に立ち、足の間に膝を割り込ませようとする。
「ダニーだけ身持ちを良くするなんて馬鹿らしいわ。何よりダニーらしくないじゃない。楽しみましょうよ」
「……止めるんだ」
 ナターシャは身体をすり寄せてシャツを引っ張りながらキスをせがんだが、ダニエルは無表情にナターシャを見下ろすだけだった。
 今までのダニエルだったら、彼女がいてもキスくらいはしてくれたし、過激なスキンシップも場合によってはアリだったのに、今日のダニエルは全くナターシャに触れようとしない。それどころか、ナターシャがダニエルの股間に手を伸ばそうとしたら、素早く阻止されてしまった。
「ナターシャ、いい加減にしないと、さすがの俺も怒るよ」
 今までと違う冷ややかな視線を向けられて、ナターシャの手が止まる。
「なによ……」
 その手がパタリと下がり、傷付いたような、昔の自信なげなナターシャが顔を覗かせた。
 ナターシャにとって、ダニエルは水揚げの相手であり、ダニエルに抱かれることで女の悦びを教えられ、娼婦としての技量を上げてきた。特殊な性癖に対応する娼館が多い中、ナターシャはその美貌と完璧なスタイル、また男を喜ばせる手技のみで娼館No.1に登りつめた。
 ナターシャが娼館の顔になってからは、ダニエルは客として来ることはなくなったが、友人として求めれば肌を合わせてくれた。誰よりも長くダニエルと途切れることなく関係を持ち、数多くいる歴代の彼女達よりもダニエルのこと、ダニエルの身体のことを知っているという自負がある。付き合うことはないからこそ、終わることのない関係。ナターシャは、ダニエルと一生そうして付き合っていけるものだと思っていた。
 自分がどれだけ多くの男に抱かれても、ダニエルも多くの女を抱いていると思えば、別に普通のことだと思えたのに……。
「何よ、娼館に来て女に触れないなんて、ダニーも枯れちゃったわね。まぁ、男好きな彼女に絞り取られればしょうがないか。じゃあ私は仕事だからまたね」
 ナターシャはダニエルに押さえられた手を振り払い、魅惑的なお尻を振りながら部屋を出て行った。
「……男好きな彼女じゃねぇよ。ったく、ルーがコンパ? そんなキャラでもないっつうの」
 ダニエルはモヤモヤする感情を吹き飛ばすように声に出してつぶやくと、ナターシャのお尻に下敷きにされた報告書に目を通すことに集中した。
 
 ★★★
 
 数日ぶりに騎士団詰め所に顔を出したダニエルは、執務室の前で談笑するルビエラを見て固まった。
 自分の前ではいつも不機嫌そうにツンツンしているルビエラが、普通に笑顔で騎士と話していたからだ。
 ルビエラとつき合えるようになって、ルビエラを抱き潰したあの日は幻だったのか? と、ダニエルは一瞬自分の正気を疑った。そんなダニエルに気がついた騎士(ミック)は、慌てたようにルビエラの肩を叩いてダニエルの存在をルビエラに知らせると、敬礼して走って行ってしまった。
「団長、視察やら王宮勤務やらでしばらくこちらに顔を出さないのでは?」
 媚薬の件は極秘任務の為、事務官のルビエラには視察や王宮からの呼び出しで騎士団詰め所にしばらく顔を出せないから、その間副団長であるジークの指示に従うように言ってあった。
 数日ぶりに会うというのに素っ気ないその態度に、ダニエルは胃の辺りをギュッと掴んだ。
「うん、ちょっと戻っただけでまたすぐに出るよ。ルーは何か変わったことはあった?」
「特にはないです。ジーク副団長の指示通りに動いてますから」
 仕事モードのルビエラは、ダニエルの顔色の悪さに眉をひそめながら、胃に当てた手に注目する。
「そう……、仕事以外は?」
「別に代わり映えしませんけど?」
 飄々と仕事をこなすイメージのあるダニエルだが、胃が痛くなるくらい激務なんだろうか?
 実は、「さっきの騎士とはいつの間にそんなに親しくなったんだ!?」「まさか、コンパなんかしてないよな?」「俺以外にはそんなに笑顔を見せるってどういうこと?」「俺、彼氏だよね?」などと、かなり女々しいことをルビエラに問い質したいのを我慢して胃がキリキリ痛んでいたなど、ルビエラは想像もしていなかった。



第2話 報連相は大事です



「そういえば、団長とはちゃんと話せたの?」
 骨付き肉をかじりながら、ハロルドがエールをグビグビとあおる。
「うん? ううん。なんか最近団長凄く忙しいみたいで、執務室にもあんま顔出さないんだよね。今週は一回も会ってないかな」
「まじで?」
 今日はアイザックが王都の商店主の集まる会合に出るとかで、夕飯を一緒に食べようと誘われ、ルビエラは酒場にハロルドと二人で来ていた。
「そうか……うちの小隊でも何人か別行動してる騎士がいるのはそういうことか。多分、近々大捕物がありそうだな」
「そうなの?」
「騎士団長付き事務官でも知らされてないのか?」
「ええ。私達がやるのはあくまでも地道な事務仕事だから、騎士団の仕事とかにはノータッチだもの。そういえば最近上がってくる必要経費の領収書が、聞いたことないお店のものが多いけど……、ジーク副団長が許可出してるから、その大捕物絡みの出費なのかな。ジーク副団長になんの店か聞いても、笑ってるだけで教えてくれないんだよね」
「へぇ。犯罪の取り締まりとかの内偵の間は、秘密裏に動くからな。でも、団長自ら指揮をとってるなら、やっぱりかなり大掛かりな取り締まりなのか。まぁ、団長がいるなら大丈夫だろうけど」
「危険なの?」
 ルビエラは、エールを一口飲んで眉を寄せる。
 騎士団団長になるくらいだから、ダニエルもそこそこ強いのだろうが、どうしても女ったらしでナンパなイメージが強いせいか、ダニエルが剣を持って立ち回る姿が想像できない。それに前世の旦那様は大学の講師だったみたいだし、頭がきれるのは納得でき、武よりも智で団長に選ばれたのだと思っていた。
「騎士の任務で危険じゃないものはないさ。要人の護衛だって、なんかあれば身を挺して守らないとだし、犯罪者もおとなしく捕まってくれる奴なんかいないさ。辺境でも山賊の取り締まりや隣国と戦があれば真っ先に戦わないといけない危険な仕事だっただろ」
「それはそうだけど……」
 ハロルドは心配そうにするルビエラを見てクスリと笑った。
「なんだかんだ言って、団長のことが心配なんだな」
「当たり前でしょ。直属の上司だし、一応……つき合ってる訳だし」

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