純愛戦線異常アリ!! 最推し騎士団長を護るため男装して婚活支援したら溺愛されました。

カバーイラスト:

先行配信日:2023/01/13
配信日:2023/01/27
定価:¥990(税込)
オタクな乙女リアの転生先は、闇堕ちルートばかりの乙女ゲー。
最推しキャラ、騎士団長アリオンの不遇エンドを回避するため、
リアは男装して(オタクも隠し)騎士団で働くことに。
親友の正ヒロイン・マリアナに代わる恋人を彼に作ってもらうはずが、
一途で女性が苦手な最推しキャラが恋に落ちたのは男装した私!?
来栖もよりーぬ代表作、書き下ろしたっぷりでe-ノワール登場。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

立ち読み
see more

1 オタ乙女、目覚める。


 ノーステン王国。
 農業を主な産業としており、四方を強国に囲まれた割にはなんとなく生き残っている国である。
 そして私はリア・プレディン、現在一八歳のうら若き乙女である。
 まあ自分で乙女とか言うのはとても痛いけども、生物学的に乙女であるのでよかろう。
 父様が伯爵の位をいただいてはいるが、猫の額ほど……は大袈裟だが、まあかなりの狭い領地でかつかつの暮らしをしている、いわゆる貧乏貴族である。
 すでに二四歳になる長兄のロイターが家督を継いでおり、本来なら両親はとうに楽隠居の生活になっている身分だが、まだ四十代だし何しろ貧乏なので、敷地内のビニールハウスで使用人と混じって高級果物に当たるイチゴやブドウ、サクランボなどをせっせと栽培して出荷したりして、なんとか収支を合わせているような始末である。
 爵位のある農家と言っても過言ではない。
 それでも、両親もいまだに仲良しだし、兄二人とも仲がいいし、私も含めて働くことを苦にしない一家なので、楽しく暮らしていた。
 長兄にそろそろお嫁さんが来たらいいねえ程度の、のほほーんとした悩みがあるレベルの平凡な家であった。
 一六の時に肺炎を起こして倒れるまでは、こんな日常が延々と続くものだと私が呑気に考えていたのも致し方あるまい。
 畑仕事の途中で雷雨に遭い、さらには思ったより寒かったもので、屋敷に戻った夜半から高熱が出て、四日間生死の境をさまよっていた時に、私は自分に前世の記憶が存在することを思い出した。
 とは言っても、その時は前世で日本という国に住んでいた二三歳の事務職のOLで、漫画や小説やゲームなんかが好きなインドア派のごく平凡な人間であったことと、このノーステン王国って名前に聞き覚えがあるんだよなぁ、というくらいのざっくりした記憶であった。
 死んだ時の状況もまったく覚えてない。
 ようやく熱が下がって命の危険もなくなった頃に私が思ったことは、
(うん……まあいいか)
 というシンプルなモノであった。
 前世の知識があったところで大した変わりはないのだ。
 パソコンもスマホもゲームもない世界でなど退屈で生きてはいけん! と思ってた割にはなくてもちゃんと生きてるし、農業生活も毎日が忙しいので、退屈などと思ったこともない。家族で仲良く暮らしていって、年頃にでもなればちょっとお金のある貴族の坊ちゃん探して結婚するんだろうなあー、とこれまたのほほーんと考えていたのだ。
 しかし二歳上の兄スタンリーが一八になり、騎士団に入隊し、休暇で屋敷に戻ってきて団服姿を見た時、怒濤のように流れ込んできた前世の記憶で、ここが私のハマっていたR指定ゲームアプリ『エターナルナイツ~ときめきダークサイド~』だと気づいた。
 なんでダークサイドがときめきなんだと思うが、きっと好きな人にはときめくだろうと制作者側が考えたのであろう。確かにマニアには圧倒的に支持をされていた。
 私も騎士団隊長のアリオンに一目惚れして課金ガチャしまくった人間の一人である。他は正直どうでもよかったので一回ずつ雑にクリアしただけだ。
 後は延々とアリオンルートを闇も含めて繰り返していた。
『エターナルナイツ~ときめきダークサイド~』は、男爵令嬢が行儀見習いと箔つけのため王宮へメイドとして働きにやって来て、主要人物と繰り広げる恋愛ゲームである。期間は二年間。
 第一王子ラングレン、第二王子ゲイリーの二人と、リアの兄のスタンリー、騎士団長のアリオン、アリオンの親友で副隊長のジェラルド(妻子持ち)、騎士団にある各部隊のリーダーであるニール、専属医のディーンの七人が攻略キャラである。
 主に騎士団のキャラが多いのは、主人公が騎士団の人間が勤務しているエリアの掃除やお茶出し担当になったからである。
 このゲームの恐ろしいのは、会話、行動、どれも選択を間違えるとあっという間に闇堕ちするところである。執着、監禁、心中、凌辱、ストーキングとまあすぐコロコロと闇に行きたがるのを回避し、真っ当な道にとどめつつハッピーエンドに向かわなくてはならない、えらくプレイヤー泣かせの難易度の高いゲームだった。
 一途なのはいいが、とにかくみんな愛が重たいのだ。
 ちなみに私は攻略キャラの妹であり、主人公マリアナ・ウェスト男爵令嬢の友達というだけで、兄様ルートにならないとストーリーにはほぼ絡まないモブみたいなものである。
 マリアナは確かに親友だけど、彼女がゲームのヒロインだったとはねえ。自分の名前に変えてプレイしていたからまったく気づかなかったわー。
 団服で詳細が蘇るとか、自分のことではあるがかなりのオタスキルと言わざるを得ない。
 最推しのアリオンはかなり不遇キャラで、彼の恋愛ルートに入らないと主人公の恋愛のとばっちりをモロに食らい、浮気相手と疑われ死刑か拷問による精神崩壊、危険な任務を押しつけられケガをして半身麻痺などろくなエンディングにならない。
 他のキャラルートをやっていて、アリオンの不憫さに涙が止まらなかった記憶がある。
 まさか、リアルでゲームの世界が存在するとはねえ。
 ……と言うことは。
 マリアナとアリオンが結ばれないと、あの不幸な展開が繰り返されるのだろうか?
 いかん。それはいかんぞ。
 最推しのアリオンには幸せになってもらわなくては!
 しかし、確かゲームのスタート時のマリアナの年齢は一八だった。兄様も二十歳の設定だったもんな。と言うことはあと二年後の話だ。
 私はあくまでもモブなので、同じように王宮に上がる設定ではなかったが、マリアナをサポートしてなんとしてでもアリオンと上手くいくようにするとか、まあ最悪他の女性とさっさと結婚でもしてもらえば、マリアナに執着する別のキャラから変な恨みは買うまい。
 でも、私はマリアナのようにおしとやかでもないし、接客も苦手だ。得意なのは料理と掃除くらいである。
 そして、一七二センチという身長もこの国の女性としてはかなり大きい。低めのヒールでも履くと一八〇近くなる。
 この身長でメイド服はかなり恥ずかしい。
 それならむしろ騎士団で事務職でもやりたい。
 だが、騎士団勤務は原則男性のみだ。
 きっと、男ばかりの職場で女子が絡むと、泥沼の三角関係だの間違いが起きやすいからだろう。
 私のようなガサツな大女が入っても間違いが起きる訳はないが、女と言うだけで門戸が閉じているのならこじ開けるまでである。
 そして、今年一八歳になった。
 そう、これからが戦いなのである。

see more
先行配信先 (2023/01/13〜)
配信先 (2023/01/27〜)