負けヒロインなのに勇者が子作りを仕掛けてくる話

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先行配信日:2022/10/28
配信日:2022/11/11
定価:¥770(税込)
勇者の幼馴染みとして尊い犠牲になる運命を「思い出した」私、ミア。
ああ、私は負けヒロイン! 勇者ルイスから初恋を寄せられるだけの存在。
旅立ちの日――せめて素敵に成長した彼の初めてだけでももらっていいですよね?
ところが! 魔王は復活しないし! 勇者のルイスは日帰り冒険で旅立たない!?
溺愛子作りを仕掛ける私の勇者様は他のヒロインには見向きもしない!
話題の勇者×負けヒロインWEB小説――大加筆で始まる真の冒険ファンタジー。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

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1 旅立ちの勇者と私


 これで最後だとわかっていても恥ずかしさは消えない。
 だってずっと一緒だった。小さい頃からなんでも二人でしてきた。
 一緒にお風呂にだって入ったこともあるのに、見慣れた裸は見知らぬ身体へと変わっていた。

「っん、あ……ッ」
「は、……声、もっと聞かせて、ミア」
「ひぅっ、ん、ああっ!」

 弱いところを狙って押し上げるのはきっとわざとだ。ずるい。意地が悪い。お互いに初めてのはずなのに、どうしてこうも私だけ翻弄されているのか。
 絶頂が近くて、また私だけ達してしまうのが嫌で、故意にきゅうとナカを締める。ただでさえお腹いっぱいに入ったそれがさらにずぐりと大きくなった気がした。

「っ……ああ、もう、君ってやつは……」
「う、ああ、やあ、ルイス、おっきくしないで……っ」
「可愛いのも、大概にしてほしいな……!」

 律動が速くなる。いやらしい音が絶え間なく続く。一度きりだと願った行為はもう何時間も経っている。一体いつになったら終わるのか、朦朧とした頭じゃ考えもつかない。
 逞しい体。見慣れた顔に、見慣れない銀髪に碧眼。勇者の力に目覚めた証の胸元の痣。
 彼は明日、勇者としてこの村を出る。幼馴染みの私はそれを見送るだけでよかったのに、つい最後に欲が出てしまった。

「も、やだ……もういい……限界……っ」
「どうして? 抱いてって言ったのはミアだよ。俺の童貞が欲しかったんでしょう?」
「もう、もらった、からぁっ! もういいっ、もういらない……っ」
「そんなこと言わないで。しばらくできないんだから、ちゃんと俺の形にしないと」
「ぃああっ、あっ、や、~~っ!」

 初めてなのに気持ちよくされて訳がわからなくなる。頭がおかしくなる。ただ初めてが欲しかった。記念としてもらっておきたかった。あとはもう、彼を忘れて好きに生きるつもりだったのに、どうしてこうなったんだろう。
 奥を何度も突かれてチカチカと視界が揺れる。勝手に達した体がびくびくと跳ねる。もう何度もイったのに、彼の腰は止まらない。また奥深くに挿入ってくる。

「あー、出る、出すよ、ミアの奥に……っ」
「やああっ、抜いてっ、もうむりぃ……っ!」
「ぅ、ぐ、っ……は、……!」
「ああああっ、ぁ、ぁ、出て、る……」

 強く抱きしめられて逃げることもできずに奥で精子を受け止める。何度も出されたお腹は薄く膨らんでいて、初めてでこうも濃厚な行為になると誰が想像できただろうか。
 子宮に精子を塗り込むように腰を揺らすルイスは当然のように避妊をしていない。それにゾッとしながら、事前に避妊薬を飲んでいてよかったと思わずにはいられなかった。

「そろそろ、孕んだかな……」

 そんなルイスの声も聞かなかったことにして、もうこれ以上は無理だと意識を手放す。
 明日から魔物を倒す長い旅に出る勇者にしては、あまりにも無責任すぎる言葉だった。


2 負けヒロインの運命


 どうやら私は負けヒロインらしい。
 不名誉なその事態に気づいたのは私の八歳の誕生日。山に囲まれた田舎の村で育った私はその日初めてプレゼントで挿し絵のついた立派な本をもらった。
 今思えばまだ物の価値も理解してない幼い娘には身に余るプレゼントだというのに、喜ぶ私に両親も嬉しそうに笑っていたのを思い出す。
 その本は名高き勇者が国を支配する魔王を封じたという物語で、勇者はその国の王となり、豊かな国を統治することになったという。
 それが今私が生きているイルミアス国であり、本の挿し絵のようにかつての勇者が初代となった王家は美しい銀髪と碧眼を代々受け継いでいるのだと知ったのは、誰かに聞いたからじゃない。
 私は本を読んで、これは《知っている物語》だと気づいた。いや、思い出した。
 この物語──『イルミアスの勇者』を。

「またその本を読んでるの、ミア」

 そしてこの村で幼馴染みとして暮らす彼こそ、『イルミアスの勇者』の主人公であることを子供ながらに気づいたのはこれが転生だと察したからだろう。
 柔らかな黒髪にヘーゼルの瞳の少年。それは隠された姿であり、本来は本の勇者と同じく銀髪に碧眼のイケメンへと成長する。
 たしか、子供の頃は勇者の力を隠すために大賢者によって力を封じられ、この僻地の村で匿われていたのだったか。
 前世で愛読していた漫画の主人公に出会えた喜びも今は薄い。だってまだショタだし、何より私のポジションは彼の幼馴染み。つまり、非常に、よろしくない。

「そんなにその勇者が好き? かっこいい? 僕よりも?」
「そりゃあルイスよりはかっこいいよ。だって勇者だもん。魔王を倒して王様にもなってるし」
「じゃあ僕も勇者になる。王様にもなるよ。それじゃダメ?」

 主人公もといルイスはへにょりと眉を下げ、ぎゅうっと椅子に座って本を読んでいた私に抱きついてくる。可愛い。が、やはりショタ。庇護欲こそ湧けど胸キュンとかではない。

「だったらルイスはこの村から出ていっちゃうね。元気でね」
「ミアひどい!」

 本来なら王子であるルイスも今はただの泣き虫な村の子だ。成長したら本当に勇者として旅に出るというのに、幼い彼はそんなことなど露知らずに子供らしく明るく元気に過ごしている。
 あと十年先の未来に魔王が復活するなんて、今は誰も知らないのだ。知っているのは大賢者と、彼の両親である国王陛下と王妃だけ。勇者の力を持つルイスが成長するまではただ待つしかない。たとえ、間に合わずに国が滅ぶ可能性があるのだとわかっていたとしても。

「……ルイス、頑張ってね」
「なにが? 言っとくけど、僕どこにも行かないからね?」
「えー? ルイスが勇者ならかっこいいのに」
「ミアと一緒にいられなくなるなら嫌!」

 むすっと拗ねた様子のルイスに笑ってしまう。今はそう言ってても、すっかり成長した一巻のルイスはこの村を出る決意をする。それもそうだろう。その時すでに魔王は復活し、この村は襲われてしまうのだから。
 そしてその日、ルイスが淡い恋心を抱いていた幼馴染みも尊い犠牲となる。つまり私。つまり、死ぬ。

「いや本当に無理。私も嫌。負けヒロインってレベルじゃない。故人やないか……」
「ミア? どうしたの?」
「ルイス、私も頑張る。ルイスも頑張れ」
「え、うん……?」

 とはいえ、勇者の力を封じられたルイスは今はまだ無力な子供にすぎない。ので、他を当たることにした。
 赤子のルイスをこの村に連れてきたのは薬師のお婆さんだ。少し森に入った湖の近くに住んでいて、物知りなお婆さんの薬や知恵には村の人もとてもよく世話になっている。
 そこで暮らすルイスも本を読んだり薬を煎じたり薬草の採取や素材集めなんかもして幼いながらに逞しく育っている。子供に対してあまりにも奔放すぎないか? とも思ったが、それがあの人なら仕方ない。
 大賢者──リンゼ・ナトリドならば。

「こんにちは、おばあちゃん」
「おお、ミアじゃないか。どうしたんだい? 具合でも悪くなったかい?」
「えっ、そうなの?」

 湖のほとりで休んでいたローブをかぶったお婆さんに声をかける。ルイスも不思議そうにしながらもついてきていて、お婆さんの言葉に慌てて私の体調を心配してくれる。
 違う違うと宥める私を一瞥して、お婆さんは重い体を動かすように腰をあげる。くしゃくしゃのしわも、優しげな微笑みも、杖をつく萎びた手もどこからどう見ても老婆のものだ。

「ルイス、先に戻ってお茶の準備をしておくれ。それとお菓子の用意も頼んだよ」
「うん、わかった」

 お婆さんの言いつけに素直に頷いたルイスが家へと向かう。それを追いかけることもなく、お婆さんが私を見て微笑みを深めた。

「さて、ワシに言いたいことでもあるのかね、異界のお嬢さん」
「さすが大賢者様。気づいてたんですか?」
「おぬしの魂は昔からちと歪でな。善良なものゆえ様子見だけしておったのじゃ。あの子に何かあってはワシが咎められるからのう」

 クク、と楽しそうに喉を鳴らすお婆さんはいつものおっとりとした話し方じゃない。軽妙で快活な喋りは年齢を感じさせず、そういえば『イルミアスの勇者』では大賢者様がロリババアとして勇者の旅路についていくことを思い出した。
 つまり、今の姿はあえての老婆であり、姿形は簡単に変えられるということだ。ロリになるのは作者の趣味だろうけど。

「前世を思い出しました。そしてこの世界が私の世界では漫画だったことも」
「ふむ。それはなかなか愉快なことじゃ。ならばおぬしはこの先どうする?」
「生き残りたい。ただそれだけです」

 私が知る限りこの物語は完結してなかったし、勇者の身に何が起きたとしても私の力じゃどうにもできない。ただ死亡フラグさえ回収できれば本望だ。あとはこの村でひっそりとルイスを応援することしかできないのだから。
 私が負けヒロインなのはルイスのこれからの恋愛遍歴に基づく。死んだ幼馴染みを想っていたのも冒頭だけで、そこから先はパーティメンバーにモテ、行く先々の女性にモテ、果てには魔王側の女幹部にもモテる始末。
 しかも何かと魔力供給だとかエッチな呪いの解呪だとか、絡みが濃厚でそれが売りだった気がする。まあそういうのが好きで読んでた私も私だけど。現実になったら生々しすぎて敬遠してしまう。

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先行配信先 (2022/10/28〜)
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