転生先はモブ令嬢! ~錬金術に没頭していたら、何故か王太子の距離が近いんです~

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カバーイラスト:

先行配信日:2022/11/25
配信日:2022/12/09
定価:¥770(税込)
乙女ゲーム『ラビ学』の、ただのモブキャラとして転生したリリアーヌ。
病弱入院生活だった前世を思えば恋愛にはまったく無縁でも
憧れのキャラと一緒に魔法学園へ通い、錬金術を学べるだけで満足だった。
けれど、気づけば人気No.1キャラ・王太子ラウールの幼なじみになっていて!?
近すぎる距離に、公開プロポーズ……って、私、モブ令嬢なんですけど!
人々を救う錬金術に邁進してたら、なぜか王太子に溺愛されました。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

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【一 あなたの愛を憶えさせられて】


「ゃ……っ! ぁ、あ! ダメ……! も、それ以上、ダメぇっ。無理、イッちゃうから、またイッちゃうからっ、もう舐めないで……っ」
「そんなこと言ってリリィ。リリィのここ、俺が舐めるたびに悦んで蜜を溢れさせてる。……そろそろまた絶頂が近いよね。イッて。その身体に、快楽と共に俺の愛を憶えさせて」
「あ、ぁっ! ぁ、あん……!」
 広く、豪奢な調度品で整えられた部屋の中。
 自分を組み敷く男に情欲を含んだ甘い声でリリィと呼ばれた少女は、天蓋に覆われたベッドの上で豊かな胸を揺らし細い腰をくねらせる。
「ひっ、あ……! 気持ちよすぎて、おかしくなっちゃう……っ。あ、あ! ダメぇ……!」
 長い時間をかけて何度も与えられた絶頂。自分が自分でなくなってしまうような未知の感覚から逃れるため、懇願する。
 けれど、そうやって嫌がれば嫌がるほど男に熱が入ることにリリィは気がついていない。彼女の潤んだ瞳と上気した頬を見て男の喉がごくりと上下した。
「や、ぁ、ぁ、あ!」
 リリィが自身を支配する快楽に耐えるために顔を振ると、長く美しい青銀の髪がシーツに広がる。
 そんな彼女の白い太腿を、逃がさないとでも言うように抱え、足の間に顔を埋めた男はしとどに濡れた秘裂に舌を這わせた。熱く湿った感触が、何度も何度も往復し執拗に愛液を舐め取っていく。
 ――本来なら彼はそんな不浄の場所に口をつけていいような人でないのに。
 男のふだんの高貴で凛とした姿を思い出し、リリィは男を押し退けるため力の入らない手で彼の頭に触れる。しかし黄金をそのまま溶かしたような髪が柔らかく指の間を流れるだけで、男は止まらない。
「イッて。リリィ。――イケ」
 言葉と共にじゅっ! と赤く腫れた秘粒を強く吸われ、膨れ上がった愉悦が真っ白に弾ける。信じられないほどの甘い痺れ。ガクガクと震える内腿にトロリと液体が伝った。
「ぁあ――っ!」
 ぐったりと脱力しながら荒い息をつくリリィを見下ろし、男は嬉しげに瞳を細め自身の唇を舐める。
 その恐ろしく蠱惑的な瞳の色は紫。まばゆい黄金の髪と神秘的なアメジストの瞳は、王家に連なる者の色彩だ。

「まだ、まだだよリリィ。もっと君を蕩けさせたい」


◇◆◇


 リリィ――リリアーヌ・アスタロッドには、生まれた時からこの世界の未来の記憶がある。
 王族と貴族、それにドラゴンや精霊が存在する国の魔法学園で恋愛を楽しむ乙女ゲーム『ラビントス魔法学園物語』――通称ラビ学。
 そのラビ学が、リリアーヌの生まれた世界だ。
 王太子、騎士、学園一の秀才、あざと可愛い後輩、ミステリアスな隠しキャラ。ヒロインは様々な魅力的な攻略対象たちとの愛を育みながら、魔法の才能と聖女としての力を開花させていく。
 もちろん、攻略対象たちは乙女のハートをガッチリ掴むために全員スタイル抜群の美形揃い。
 人気イラストレーターを起用した超絶美麗なスチルと、人気声優の美声による名台詞の数々は世の乙女を悶絶させ、萌え転がらせた。爆発的なヒットを飛ばしたこのソフトの販売記録は、ずっとトップを走り続けているらしい。

 そんな乙女たちを夢中にしたヒロインの恋愛と三年間の学園生活。その舞台となる全寮制の王立魔法学園。
 先々代の王が創立した学園は『すべての才能を持つ者たちのために』という理念の元、貴族平民関係なくみなに入学の許可が与えられている。
 ある晴れた日のこと。王都で小さな花屋を営む両親と暮らすヒロインは、微弱ながら浄化魔法を扱うことができたために学園の入学許可証を受け取った。
 プレイヤーの努力しだいで彼女はその浄化魔法の能力を飛躍的に伸ばし、攻略対象と共に世界の危機を救う聖女となるのだ。
『貴族でもなんでもない私が、まさか王太子様と同じ年に入学できるなんて夢みたい……!』
 ヒロインの憧れの存在の王太子。メインヒーローの彼のルートは一番攻略難度が高く、ライバルキャラの公爵令嬢も登場するが、キャラクター人気はぶっちぎりの一位だった。
『私、頑張る……!』
 魔法学園所有の白い鷹の使い魔が運んできた封筒を胸に喜びで涙するヒロイン。彼女の瞳に映る青空は希望と共にキラキラと輝いて見えた。きっとこれからの学園生活は、大変なこともあるだろうけれど、それ以上に素敵なものになるだろう。
 ――というのがこのゲームのオープニングだが、リリアーヌはこのゲームのヒロインではない。
 ちなみに、ライバルキャラの公爵令嬢でもない。
 リリアーヌは、歴史が長いだけの貧乏伯爵家に生まれた、完全なモブだ。

 生まれた時からある記憶によると、彼女の前世は日本に住んでいた病弱な少女だった。
 少しも無茶ができず、すぐに熱を出し心臓が悲鳴をあげる身体。繰り返される入院と手術。おかげで、人生のほとんどをベッドの上で過ごした思い出しかない。
 だからだろう、少女は貪欲に知識を求めた。
 入学してからずっと通えていない高校の教科書。料理やハンドメイド作品のレシピ本。主人公の生きざまに心が震える冒険譚。緻密な挿絵が美しい外国の児童文学書。ニュースになるほどロングランになった映画の原作コミック。
 本だけじゃない。テレビ。映画。ゲーム。SNS。
 ベッドの上にいたまま手を伸ばせる世界には、手を伸ばし続けた。
 行きたい。友人の待つ学校に。
 行きたい。心躍る冒険へ。
 行きたい。ため息が出るほどロマンチックな恋愛の世界に。
 行きたい。行きたい。行きたい。
 ――――生きたい。
(もし、もう一度生まれることができるなら、私、今度は思いっきり外を走ってみたい)
 そう涙をこぼしながら、少女の生は十七年で幕を閉じた。
 ――そんな願いが天に届いたのか。
 真っ白な光に包まれ眠っていたリリアーヌは赤ん坊の声で目を覚ます。
 それは少女が夢中になって手を伸ばした、憧れの世界……ラビントス魔法学園物語の世界に新たに誕生した自分の産声だった。

 *

 豊かな森と鉱山、美しい海を有するアーヴァンド王国。
 その国で二百年続く王家に長く仕え、穏やかな一族の気質ゆえ宮中での出世はなかったが、細々と貴族の暮らしを続けてきたアスタロッド伯爵家。
 そんな伯爵家の長女として生まれたリリアーヌは幼い頃から聡明で、そして活発な少女だった。
「リリィ、そんなに急いで走ったら転んでしまうわよ。気をつけて」
「はぁいお母さま! でもそろそろ月光薔薇の結晶ができる頃なの! 私、待ちきれないわ!」
「温室に行くのもいいけれど、午後からはテーブルマナーの先生がいらっしゃるから忘れないでね!」
「はーい!」
 太陽の光を受け青銀に輝く髪をなびかせながら、黄水晶の瞳を好奇心でいっぱいにした少女は手入れの行き届いた庭を駈ける。
 リリアーヌ六歳。小花柄のエプロンドレスから伸びた足は軽やかに大地を蹴り、ふっくらとした頬はツヤツヤと健康的だ。
 ――そう。自分の身体は今、こんなふうに走っても息が苦しくならないし、心臓も痛くならないのだ。無性に嬉しくなって両手を広げ、甘やかな花の香りが薫る風を受ける。
 自分が生まれた世界は、ヒロインの恋愛のための乙女ゲームの世界。さらにそのゲームの世界の中で、リリアーヌはライバルキャラですらない、辛うじて【リリアーヌ】という名前がウィンドウに表示されていただけの脇役キャラ。
 物心がついてその事実をハッキリと認識した時、それでもリリアーヌは神に感謝した。
 だって。この身体は走ることができる。
 だって。この手は欲しいものを本当に掴むことができる。
 今度こそ自分は、行きたい場所に行くことができる。
 あれだけ憧れた自由に手を伸ばせば触れることができるのだ。この世界の主人公が自分でないことくらい、なんだって言うのだ。
 けれど、ゲームでわずかな描写があった通り、リリアーヌの魔力はとても微弱だった。
 火、水、風、木、雷、光、闇。
 例えば水の魔法なら、魔力を持つ人間であればバケツ一杯ぶんの水を操れるのが一般的なのに対して、リリアーヌはコップ一杯ぶんの水を操るのが精いっぱいだった。それは火の魔法でも風の魔法でも同様だったので、どの属性の精霊とも相性が悪いらしい。
(やっぱりそこら辺のステータス設定は原作のゲーム通りなのね……)
 と言うことは恋愛のスペックも原作通り。きっと攻略対象たちのような煌びやかな男性たちに縁はなく、最終的に身の丈に合った人と結婚するのだろう。
 リリアーヌは四歳の時に自分の魔法の才能と華やかな恋愛の可能性にそう見きりをつけた。
 でもせっかく健康に生まれてきたのだ。どうせなら十二年後に入学する予定の学園生活を楽しみたい。
 何か自分にも、魔法以外の才能はないだろうか?
(例えばそう、原作ではステータス項目に設定されてない……錬金術とか)
 原作では育成アイテムが欲しい時のミニゲーム程度の要素でしかなかった錬金術。道端の石ころをダイヤに変え、不老不死の薬をも作り出せるというその術は、魔法が大きく発展したアーヴァンド王国ではもはや寂れ忘れ去られゆく技術だ。
 不老不死の薬など幻にも等しい眉唾物の話で、この国には栄養剤や眠気覚まし程度の薬を作れる錬金術師しか存在しない。
(でも、だからこそ錬金術に関する設定は甘そうよね……?)
 それに。あのベッドの上で何冊も読んだ料理やハンドメイド作品のレシピ本。様々な分野の教科書に専門書。何度も見た通信講座の動画たち。それらの記憶は今でもリリアーヌの中にある。
 ならば魔術よりは錬金術の方が自分に向いているのではないか。そう閃いた二年前。今世を精いっぱい生きると誓った少女は、四歳で錬金術の習得にのめり込んだ。
 六歳になった今では作れる薬もアイテムも増え、時々、家族や領地の人々から依頼を受けるほどになった。依頼主に言われるありがとうの言葉と笑顔はリリアーヌの心を温かく、明るくしてくれた。皆に喜ばれるのが嬉しくて、リリアーヌはますます錬金術に惹かれていく。
 今日も、領地の神父さまに頼まれた魔除けのクリスタルを作るための材料……月光薔薇の結晶の様子を見に温室に来ていた。
「うーん。もう少し青っぽい結晶の方が効果あるかなぁ?」
 そう首を傾げ思案するリリアーヌの耳に、ガシャン! と何かにぶつかる音と悲鳴のような父の声が聞こえた。
「大変だ! 大変だっリリアーヌ!」
 おっとりしていてお人好しで。ふだん声を荒らげることなどほとんどない父が転がるようにこちらへ走ってくる。来る途中で転んだのか膝には草がついていた。
「そんなに慌ててどうしたのお父さま。お客様とお話をしていたのではなかったの?」
「その! そのお客様が持ってきた書状が大変なんだよリリアーヌ!」
 ガシッ! と、リリアーヌの肩を掴んだ父がますます声を大きくして叫ぶ。
「王様が、国王陛下が! お前に会いたいとおっしゃっているそうなんだっ!」

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先行配信先 (2022/11/25〜)
配信先 (2022/12/09〜)