炎の姫と氷の軍帝 年下皇太子と溺愛政略結婚

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先行配信日:2022/11/25
配信日:2022/12/09
定価:¥990(税込)
「なんてケツしてやがる……」無礼極まる言葉から始まった新婚生活。
十才年下の氷の軍帝ウィーラーに嫁ぐことになった炎の姫レオノーラ(28)。
愛のない政略結婚のはずだったのに……実は、彼は私が大好き?
年の差すれ違いカップルの、あまりにも初々しい初恋政略結婚戦記。
何度も求められる濃厚初夜と熱い日々。誤解を乗り越える熱愛告白。
あなただけを愛する誓いが二人を繋ぐ。人気WEB長編、大改稿大加筆。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

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もう一つのプロローグ


「なんてケツしてやがる……」

 婚約者であるウィーラーと初めて会った日、去り際の後ろ姿に呟かれた侮辱の言葉。
 自分が望まれた花嫁ではないことは充分承知している。レオノーラは唇を強く噛み涙をやり過ごした。

 ナイトドレスを引き裂かれ、レオノーラは驚きのあまり身動きができなかった。さらさらとした生地は簡単に左右に分かれてレオノーラの素肌を晒したが、布の上から散々舐めしゃぶられた乳首にだけは張りついたままだ。
 ウィーラーはそっと布の端をつまむと、ことさらゆっくりとそれをはがしていく。ずっと欲しかったプレゼントの包み紙でも開けるように。
「んっ!」
 布がはがれる感覚に、敏感に立ち上がった乳首が反応する。跳ねるように姿を現したレオノーラの胸に、ねっとりと絡みつくような視線がまとわりついた。
 ウィーラーは無言のままレオノーラの背中に手を回して浮かせると、片腕ずつナイトドレスを引き抜いた。胸を突き上げるような格好にレオノーラは耐えられずにぎゅっと目を瞑る。ウィーラーの吐息がふっと胸の先端をなぶり、ぴくりと体が震えてしまう。それに合わせてレオノーラの豊かすぎる胸もふるりと震えた。
(これでは、まるで私が誘っているようだわ……!)
 取り払われたナイトドレスは、ウィーラーの手によって無造作に捨てられ、レオノーラは生まれて初めて男性に素肌をさらすことになった。
(ああ、恥ずかしい……さっきだって、華奢だなんて嫌みを言われたばかりなのに)
 そう思うとレオノーラはとても正気ではいられない。それでも、ウィーラーに抵抗することはできなかった。じっくりと時間をかけたキスと、執拗にしゃぶられた胸への愛撫で、すでに体は熾火のように熱くなっている。
 ふと、ウィーラーが離れた気配がしてレオノーラはおそるおそる目を開ける。
 ウィーラーはベッドに両膝をついたまま、じっとレオノーラの裸を見つめていた。アイスブルーの瞳がギラギラと欲望に燃えている。冷たいはずの視線が熱を持ってレオノーラの裸を堪能していた。
(どうして……なぜそんな目で見ているの? あなたは、私のことが嫌いなはずなのに!)
 レオノーラは世継ぎをもうけるためだけに選ばれた妃だ。王族としての義務、逃れられない結婚という国同士の契約。
 しかもレオノーラはウィーラーより十も年上の行き遅れだった。初夜で酷い扱いを受けないだけマシである。
 それなのに、まさか、欲望を隠しもせずに押し倒されるとは考えもしなかった。初めてウィーラーと会った時、レオノーラは酷い侮辱を受けたというのに。
(そう、そうよ、あんなこと言っておいて……)
 忘れたくても忘れられない、下品な言葉だ。
(それなのに、なんでよ、なんでそんな目で見るのよ! 私の体なんて、みっともないだけでしょ!)
 今もウィーラーは、じっとりと絡みつくような視線をレオノーラに向けている。薄い唇をぺろりと舐め、欲望を吐息と共に逃がす。
 ウィーラーの視線はレオノーラの唇から始まり、首筋、乳房、腰、そして淡い繁みまでをゆっくりと辿っていき、そこからまた唇に戻るまでの間で自分のシャツを脱ぎ捨てた。
 鍛え上げられたウィーラーの肉体に、レオノーラの鼓動がドクンと大きく跳ねる。
 太い首、発達した肩の肉の盛り上がり、女性にしては大柄なレオノーラを軽々と抱き上げる逞しい腕、体のあらゆるところについた傷跡さえも、ウィーラーの男としての魅力を演出している。
 彫刻のように美しい肉体から目が離せなかった。その完成された肉体に再び抱きしめられ、レオノーラの内壁がどうしようもなく疼き出す。
 素肌と素肌がぴったりと貼りつき、ウィーラーの冷たい体がレオノーラの熱い肌に心地よく吸いついている。抗うこともできずにウィーラーに縋りつくと、背中の盛り上がった筋肉に触れ、まるで自分が頼りない小さな動物にでもなったようだった。
 これからゆっくりとこの男に食い尽くされるのだ。
 酷い言葉で侮辱されたのを忘れたわけではない。それなのに、熟れきったレオノーラの肉体は、思考と一緒にどろどろと熱く溶け出そうとしていた。
(ウィーラーが悪いのよ……なんでこんなに大事に抱くの……?)
 割りきって初夜に臨んだはずなのに、初めて触れる男性の圧倒的な存在感に、レオノーラはもう降参するしかなかった。
(ああ、この人は私のことなど愛してない、愛していないのに……!)
 ウィーラーは少しだけ腕を緩め、レオノーラの瞳を覗き込んでくる。間近で見るウィーラーの瞳は欲望でよどみ、美しい顔に淫らな色気を滲ませていた。
「レオノーラ、あなたからもキスが欲しい」
 ねだられるキスに、レオノーラはずきずきとした胸の痛みを感じながら応える。薄く冷たいウィーラーの唇をそっと舌で舐めて味わい、その中に差し入れた。
 すぐにきつく抱きしめられ、ウィーラーの舌がレオノーラに絡みついてくる。じゅるじゅると啜るように舌をしゃぶられると、その淫靡な動きに呼応して奥から熱い雫が溢れてきた。
(勘違いしてはだめよ)
 そう思いながらも、レオノーラの体はウィーラーに開いていく。両手で乳房を掴まれ、体のあらゆる場所にキスを受け、濡れそぼった卑猥な場所まで晒し、ウィーラーの冷たい熱を受け入れていった。


プロローグ


 大陸一の領土を誇るエスクレド帝国。
 一年中涼しく過ごしやすい土地は、商業も産業も発達し、潤沢な資産でさらに帝国を潤している。しかし、この地は元々極寒であり、わずかな貧しい村があるだけだった。

 ──昔、氷の魔女が人間の男を愛した。
 男の住むこの地に降り立ち、冷気を操って今の気候に作り替えた。
 男も魔女を愛し、二人は契りを交わした。
 二人の間に生まれた男の子アーサーは、魔女から受け継いだ氷の魔術で土地を治め、帝国を作り上げた。

 これがエスクレド帝国の建国神話であり、初代皇帝アーサー・エスクレドの伝説である。以来、皇帝と第一王子は必ずアーサーを名乗っている。
 王族には、この神話を裏付けるように、ときおり氷属性が強く出る者が生まれた。生まれながらに膨大な魔力を有し、氷の魔術を操ることができるため「魔女の落とし子」と呼ばれ、魔女を始祖に持つ国の安泰の象徴となった。
 十八年前生まれたウィーラー・アーサー・エスクレドも魔女の落とし子だった。直系の第一王子はただでさえ血が濃い。ウィーラーが身に宿した氷魔術の力は、過去に類を見ないほどの強さだった。
 ウィーラーが身にまとう魔力は冷気を帯び、次第に、周辺の空気を冷やすまでになった。彼の周りは常に寒々と冷えきり、特に女性はその寒さを強く感じるようだった。
 十歳を過ぎる頃には、侍女や乳母は同じ部屋にいることもできないほどで、側近や侍従は皆厚いコートを着込んだ。
 十五歳になったウィーラーは、皇太子としてだけでなく、軍人としても優秀だった。分析力に長け、常に冷静沈着。政治も戦局も、残酷なほど合理的で無駄は容赦なく切り捨てる。
 魔力の影響で早くから女性を排除せざるをえず、彼の周りを固めるのは、冷酷な宰相や豪胆な将軍など、上に立つ者特有の非道さを併せ持たねばならない者ばかり。ウィーラーは女性のまろやかな慈しみやぬくもりをろくに享受することなく、次期皇帝として冷徹な皇太子となっていった。
 十六歳で戦場に立つと、その外見から『氷の軍帝』と呼ばれるようになる。
 輝く銀髪にアイスブルーの瞳、抜けるような白い肌のウィーラーが、錆色の鎧をつけて馬上で戦う姿はこの上なく美しく、それゆえに恐ろしかった。百八十を越す長身に、鍛え上げられた体躯、そこから大剣を振るう姿は鬼神のごとく、一人神話から抜け出してきたようだった。
『氷の軍帝』の美しさと強さが大陸中に広まり、戦争も収まりを見せた頃、新たな問題が持ち上がった。平和な世に必要なのは、他国との同盟と世継ぎだ。ウィーラーは唯一の直系の王子。彼の子どもが平和には必要だった。
 しかし、ウィーラーの魔力は女性を寄せつけない。
 だが、救世主は存在した。エスクレド帝国のずっと南に、アスタルノア王国という小さな国があった。ここの第一王女は『炎の姫』と呼ばれており、炎の魔力を操る。しかもその魔力は、男性が近付けないほど熱く発現するという。
 ウィーラーも炎の姫も、なぜか異性には魔力が強く出る。氷と炎という正反対の性質だからこそ、現皇帝フェルミン・アーサー・エスクレドは即決した。エスクレド帝国とアスタルノア王国との同盟、友好の証としての婚姻が進められた。
 どう見ても、ウィーラーの世継ぎのためだけに選ばれた姫だった。それだけ、ウィーラーの世継ぎ問題は重要だったのだ。そのために、大国エスクレドが取るに足らない小国アスタルノアと同盟まで結んでいる。
 逆手に取れば、この婚姻を白紙にすれば、エスクレド帝国の隙をつくことができる。姫の命が狙われる危険が大いにあった。
 しかし、アスタルノア王国はこの申し出を断れなかった。エスクレドが大国だからということもあるが、それだけではない。
 炎の姫は、今年二十八歳になる行き遅れ、年増の姫であったのだ。
 腹を借りる代わりに、大国の十八歳の皇太子の妃、それも正妃にしてやろうという申し出であった。
 もとより、姫はこの縁談に否やを唱える気はまったくなかった。一国の姫ならば政略結婚は当たり前。それすらできずお荷物でしかなかった自分が、やっと国の役に立てる。道中に命を落とそうが同盟は結ばれる。自分の命をかけるだけの意味があった。
 無事婚姻しても、子どもさえ産めば年増の自分はお役御免だろう。それからどんな扱いを受けようがいい。使い捨てでいいのだ。
 二国の同盟と婚姻の手続きは速やかに行われた。アスタルノア王国からエスクレド帝国までは馬車で二十日間の道のりである。アスタルノアの国境では、エスクレドから護衛の騎士まで派遣された。
 炎の姫は、自分は大国に歓迎されているのだと自尊心が慰められた。しかも、護衛としてきたのはウィーラー・アーサー・エスクレド本人であった。
 だが、国境で急ぎウィーラーと対面した炎の姫は耳を疑った。
『氷の軍帝』と呼ばれるに相応しい気高さと高潔さをまとった魔女の落とし子は、姫の後ろ姿に呆然と呟いたのだ。
「なんてケツしてやがる……」
 およそ大国の皇太子が口にしていい言葉ではなかった。

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