お姉様を悪役令嬢役から守ろうとがんばったら何故か恋人ができました

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先行配信日:2022/12/23
配信日:2023/01/06
定価:¥770(税込)
大好きなリュシエンヌお姉様が悪役令嬢として婚約破棄され、お家断絶!?
転生妹令嬢シャルロットの奮戦努力の結果、破滅フラグを回避し無事迎えた卒業パーティー。
王太子アルフォンスは呆れるほどに姉を溺愛し、結婚を早めるほどのハッピーエンドに。
平穏になった今、私も新学期には恋人ができるといいなあと思っていたら、
王太子の側近で憧れの公爵令息フェルナン様から何故か突然プロポーズが!
大好きなひとに愛される溺愛エンドが私にも!? 人気WEB小説大改稿加筆。

成分表

♡喘ぎ、二穴、NTR、非童貞、などの特定の成分が本文中に含まれているか確認することが出来ます。

立ち読み
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<1> 平穏無事に卒業記念パーティ



 煌びやかに飾りつけられたホールに、たくさんの着飾った紳士淑女が集っている。
 皆、晴れ晴れと明るい、喜びや安堵、そして気合の入った表情でこの場に臨んでいるのは、これが王立学院の卒業記念パーティーだからだ。
 昼間のうちに卒業式が行われ、そして夕刻になってからパーティーが開かれる。この王立学院は貴族の学校であり、卒業後の社交界の縮小版と言ってよかった。
 参加しているのは卒業生だけではなく在学生もいるので、この大ホールはかなり広いがそれでも人で溢れ返っている。
 これだけ人がいると友人知人を見つけるのもなかなか難儀そうだが、シャルロットは探していた姉をすぐに見つけることに成功した。
 年子の姉であるリュシエンヌは今年の卒業生であり、首席を取った才媛だ。ずっと二年間競り続けたが、王太子殿下は卒業試験に於いてもついに彼女の順位を抜くことはできなかったらしい。
 万年中の上のシャルロットとは雲泥の差で優秀な姉は、彼女にとって敬愛する自慢の姉であり、大好きな、本当に大切な姉だ。どれくらい好きかといえば、姉の婚約者である王太子殿下としょっちゅう姉の取り合いをしては怒られるくらいには大好きであり、それは周囲に知らぬ者はないくらいに有名だった。
 その姉は、王太子アルフォンスにエスコートされてホールに入場してきたところだ。アルフォンスの瞳の色である美しい青色のドレスは落ち着いた美貌の姉によく似合っているし、女生徒が首席の時に羽織る習わしの純白の薄いケープも誇らしい。王太子にドレスと共に贈られた髪留めでシャルロットより少し薄いストロベリーブロンドの髪を美しく結った凛とした立ち姿は、どこに出しても誇れる貴婦人ぶりだ。
 その隣に立つ王太子も、いつもは適当に流すだけのプラチナブロンドの髪を綺麗に整えた盛装で、姉の目の色である濃い緑の宝飾品をそこかしこに使った衣装はとても凛々しく、精悍な美形が何割も増していて目の保養になるコト請け合いだ。
 美男美女の王太子殿下とその婚約者は、そこにいるだけで目を引く美しいカップルとして皆のため息を誘った。
 そこにふらふらと近寄っていったシャルロットに気付いて、リュシエンヌが足を止めてくれる。
「……お姉様、お綺麗。本当に、今までで一番お綺麗。ああ、なんて素敵なの……」
 思わずうるうると目を潤ませながらシャルロットが姉を褒め称えると、リュシエンヌがわずかに咎める口調で言った。
「ありがとう、シャル。でも、まずは殿下にご挨拶でしょう」
「あ、はい。王太子殿下、ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう。相変わらずだな、シャル。きみも可愛いよ。そのドレス、よく似合っている。我が婚約者殿の方が何倍も美しいが」
「ありがとうございますけど、それは当たり前です。私なんかよりお姉様の方がお美しいコトは誰が見たって自明の理です」
「本っ当に相変わらず、きみは姉上が大好きだな」
「それも当たり前です。お姉様くらい素敵な方は他にいません。大好きなんて言葉ではぜんっぜん足りません。愛しております。アルフォンス様よりもずーっと!」
「それは聞き捨てならんな。俺の方が彼女を愛しているに決まっているだろう。おまえは家族愛だけだろうが、俺は生涯の伴侶としても、人間としても、さらには成績を競った学友としても愛し尊敬もしている。絶対俺の方が上だ」
「そんなことないです。生まれた時からずっと寝食を共にしてお傍にいた私がお姉様を愛していることにかけてアルフォンス様に負けるはずがありません!」
「いいや、俺の方が上だ」
「私ですー!」
「シャル、いい加減になさい。アルフォンス様も、一緒になってそのような。からかわないでくださいませ」
 握り拳で主張していたら、リュシエンヌに止められた。
「はい、ごめんなさい。でも、お姉様、私もアルフォンス様もからかってなんかいませんよ」
「その通りだ、リュシー。俺がきみを愛していることはちゃんと日々伝えているだろう。れっきとした事実だよ」
「そんなところだけ仲良くなさらないでくださいませんか」
 若干頬が赤いのはさすがに照れているのだろうか。そんなお姉様も可愛らしい、と思っていたら後ろからくっくっと笑い声が聞こえた。振り向く前にリュシエンヌが眉根を寄せている。
「何故そんなに笑っておいでなのです? 相変わらず失礼ですね、フェルナン様」
「失礼。相変わらず殿下と妹君の愛情を一身に受けられていて羨ましいなと」
 姉の声で振り向けば、そこには爽やかな笑顔の青年が立っていて、シャルロットは頬を染めて頭を下げた。王太子と同じプラチナブロンドの髪で、彼とは違う碧の瞳の彼は、優しい瞳でシャルロットに微笑みかけた。
「失礼いたしました、フェルナン様。ご卒業おめでとうございます」
「ありがとう。シャルロット、今日はまた一段と可愛らしいね。そのドレスもとても似合っているよ」
「あ、ありがとうございます。嬉しいです」
 姉とは違い、美しさより可愛らしさの方が優先されているデザインであるオレンジ系統のドレスは、家名に因んでいるのではなくシャルロットの好きな色だからだ。まだ婚約者の決まっていないシャルロットだから自分の好みの色とデザインのドレスを選んだが、それを褒めてもらえるのは嬉しい。
 褒め言葉に照れてはにかむと、王太子殿下が不服そうに言う。
「俺の時と随分対応が違うな。フェルには素直に礼を言うのに」
「だってアルフォンス様は私をダシにお姉様を褒めたいだけじゃないですか」
「まあそうだが、別におまえが可愛くないと言っているわけじゃないんだから素直に褒められていればいいだろうに」
「社交辞令にしたって素直にお礼を言いたくなさそうな言い方をなさるからです。まあ、お姉様を褒め称えたいのは一緒ですから甘んじてそんな扱いも受けますけども。その点フェルナン様は紳士的にちゃんと私を気遣ってくださるので」
 大概な発言に今度はアルフォンスがくっくっと笑い声を立てると、フェルナンがにっこりと笑った。
「気遣いだけじゃなくて、ちゃんと本当に可愛らしいと思っているよ。きみにそんな嘘は言わないさ」
「あ、ありがとうございます」
 姉を讃えるのはいくらでも賛同するのに、自分に対して言われると恥ずかしくなってつい照れてしまう。それがシャルロットにも親切で誠実で爽やかな、いつも笑顔のフェルナンであればなおさらだ。
 だが、リュシエンヌがすっと眇めた目をフェルナンに向けた。
「フェルナン様、妹を惑わさないでくださいませ」
「心外な。心からそう思っているのに。きみだってシャルロットは可愛らしいと思うだろう?」
「もちろんシャルは私にとって世界一可愛い妹ですが、私とあなたの可愛いは違うでしょう?」
「そうだね。同じでは困るな」
 眉根を寄せているリュシエンヌとあくまでにこやかなフェルナン、なにやら不穏な雰囲気の会話だが、シャルロットは姉の言葉を都合のいいところだけしっかり聞いた。うるうると目を潤ませながら、嬉しそうに姉の腕を捕まえて抱きつく。
「お姉様……! 世界一可愛いなんて、私嬉しい……!」
「当たり前でしょう。あなたは私のただ一人の妹なのだから」
「はうううう! お姉様、愛してます! 大好きいいぃぃぃぃ!」
「はいはい、ありがとう。でも、シャル、人前よ、はしたないわ」
「ごめんなさい、でも嬉しいいいぃぃぃぃ!」
 すっかり年中行事になってしまった日常の光景を、周りは微笑ましい目で見ていて、今さら誰も咎めるようなことはしない。
「本当に仲がいいな、きみたちは。もうこの光景も今日が最後かと思うと少し寂しくもあるが」
 だが、アルフォンスがその光景を眺めながらふとつぶやいた言葉に、シャルロットの動きが止まった。そして、さっきまでの勢いが一気に萎んでしゅんとしてしまう。
「……そうなんですよね。もうこれで、新学期になってもお姉様はいらっしゃらないんですよね。フェルナン様も、ついでにアルフォンス様も。寂しいです」
「おい、俺はついでか」
 殿下がツッコむが、へにょんと眉を下げて悲しそうなカオのシャルロットは返事をしない。
 リュシエンヌとアルフォンス、そしてフェルナンは同級生だがシャルロットだけが一つ年下だ。だから今日の卒業式で三人は学院を卒業するが、シャルロットだけは残ることになる。
 この一年なにかと行動を共にしていた、というよりシャルロットが三人にひっついていた関係でずっと一緒のような気がしていたが、現実にはここで別れてしまうことになるのだ。
 もちろん卒業したとて縁が切れるわけではない。
 だが、卒業したらアルフォンスは王太子として政務に参加することになるし、フェルナンはブランシュ公爵家次男として、殿下の従兄弟として、彼の補佐に就くことになるだろう。そして卒業することで姉も王太子妃としてアルフォンスとの結婚が現実のものとなるのも時間の問題だ。
 学院を卒業すれば、これをもって一人前の成人と認められ、結婚も許される。三人が一足先に大人になることで、遠くなってしまう気がする。一人だけまだ学生の身であるシャルロットが子供として取り残されてしまったようで、なんだかとても寂しい。
 しょぼんとしていると、ふと両肩が温かくなった。え、と見やれば肩に手が乗っていて、それがフェルナンのものだと気がついた瞬間カオが熱くなる。
「アル、そんなこと言うからシャルロットがしょげてしまったじゃないか。可哀想に」
「事実なんだからしょうがないだろう。実際我々は今日で学院生活は最後なんだし」
「それにしたって、一人で取り残されてしまうシャルロットにもう少し気を遣った発言をしないか。将来の義理の妹なんだろう。リュシエンヌに嫌われるぞ」
「それは困るな」
「そんなことで私はアルフォンス様を嫌ったりしません。あと、シャルの肩から手を離してやってください。不用意に女性の身体に触るなど、それこそ失礼です」
「あぁ、それは失礼した。シャルロットが寂しそうだったもので、慰めたくてつい」
 にこやかに手を離されて、その温かさがすっとなくなってしまったコトに寂しさを感じてしまったシャルロットは、はっと我に返って慌てて言った。
「い、いえ、お気遣いをありがとうございます。私だけ一つ年下なのですから一人だけ残るのは初めからわかっていることです。寂しいですけどしょうがないことですから」
「仕方がないが、離れてしまうのは俺も寂しいよ、シャルロット」
 微笑んで言ってくれるフェルナンの優しさがありがたくて、シャルロットも微笑み返す。
 フェルナンはいつもこうしてシャルロットをなにかと気遣ってくれて優しくしてくれる。とても嬉しいのだが、ちょっと困る。つい好きになってしまいそうになるが、というか、実はもう結構好きなのだが、さすがに自分にはすぎた人だ。
 家格が足りないわけではない。シャルロットはオーランジェ侯爵家の次女であり、姉が王太子妃に立てるほどにはいい家柄だ。
 だが、自分がフェルナンに女性として好かれているとは思えなかった。

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先行配信先 (2022/12/23〜)
配信先 (2023/01/06〜)